カルト歌謡カルタ【に】「人間狩り」ピーター

カルト歌謡カルタ【に】「人間狩り」ピーター

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「人間狩り」

1974年発表 歌/ピーター 作詞/なかにし礼 作曲・編曲/馬飼野康二

ピーター(池畑慎之介)、当時21歳、13枚目のシングル曲である。ピーターは、日本舞踊の一種である上方舞吉村流の家に生まれる。父の四世家元吉村雄輝は人間国宝に認定されている。雄輝の前の代まで代々女性が家元を務めた女形主体の舞を、幼児の頃から跡継ぎとして厳しく仕込まれた。男性とも女性とも捉えられる容姿と妖艶さの源が、そこにあると言える。

16歳の時に家出をして、六本木のゴーゴークラブで働く。一見女性とも思える風貌の美少年で人気のダンサーとなり、舞台美術家の朝倉摂にスカウトされ、1969年「薔薇の葬列」(松本俊夫監督)主演でスクリーンデビュー。当時16歳の初々しさと小悪魔的な魅力を持つピーターが主人公と重なり、見事な妖艶さを出している。

同年歌手デビューの曲「夜と朝のあいだに」で第11回日本レコード大賞の最優秀新人賞を受賞。作詞は「人間狩り」と同じなかにし礼。デビュー前の15歳の頃から、お互いの家を行き来する間柄だった。

今回の「人間狩り」は、題名から恐怖を感じさせ、さらに低音の歌い出し、サビの「♪マン・ハント」というコーラスが、よりホラー感を出している。

テレビの歌番組出演時では、真っ黒なマントに無数の電飾を付けて踊り歌ったという。リフレイン部分「♪本当の自分を見るのが恐いから~」という歌詞を歌うピーターの姿に、主人公を演じる俳優・池畑慎之介が見え隠れして、より曲の妖しさを際立たせている。

解説・イラスト:はらめがね