カルト歌謡カルタ【ほ】「盆ダンス」橋幸夫

カルト歌謡カルタ【ほ】「盆ダンス」橋幸夫

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「盆ダンス」

2005年発表 歌/橋幸夫 作詞/木下龍太郎 作曲/谷口尚久 編曲/伊豆のりお

「♪ボンボンボンボン 盆ダンス みんなで踊ろう盆ダンス」と繰り返されるこの曲は、橋幸夫61歳の2005年2月に、デビュー45周年を記念して発売された171枚目のシングル曲である。

橋幸夫といえば「潮来笠」に始まり数々の歌謡曲や演歌でヒット曲を出しているが、「リズム歌謡」の第一人者でもある。1964年「恋をするなら」に始まり、「ゼッケンNO.1スタートだ」、「チェッ・チェッ・チェッ-涙にさよならを-」、1965年「あの娘と僕(スイム・スイム・スイム)」を発表。1965年第7回日本レコード大賞で企画賞を受賞している。その後も「恋のメキシカン・ロック」(1967年)をはじめ、数々のリズム歌謡の曲を発表している。

2004年松平健の「マツケンサンバⅡ」が大ヒットした翌年発表の「盆ダンス」。バックダンサーを従えて歌う姿は、松平健with腰元ダンサーズのそれに類似。その振付も同じ振付師の真島茂樹……。流行りに便乗と言われても仕方ないが、橋本人は「10年位前から考えていた。時期が来た」と言い放っている。時に「触発されて…」とある意味認めつつも、「(テンポの速いマツケンサンバⅡに比べて)こちらは盆踊り、お年寄りは踊りやすい」と対抗心を剥き出しにしている。これが良い。昭和の歌謡界を牽引してきた一人としての自覚か、自信か。今の音楽には見られない逞しさと力強さを感じる。当時低迷気味の歌謡曲を盛り上げようとする意気込みも垣間見える。

「♪元気陽気でいつでもやる気 ソレ笑顔と笑顔で 頑張れニッポン」と前向きな歌詞を、笑顔で踊り歌う姿は堂々として立派である。が、気持ちを出した一生懸命さに、ほんのり哀愁と可愛らしさを感じる。

解説・イラスト:はらめがね