日野原重明・追悼演奏会にテノール歌手ベー・チェチョルが登場

ベー・チェチョル

2017年7月18日に呼吸不全のため105歳で亡くなった聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏を追悼する演奏会が、12月10日に東京・新国立劇場 オペラ劇場にて開催された。

演奏会は日野原氏への追悼と、生前より企画され9月に出版された最後の書籍「生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉」の出版を記念して開催されたもの。当初は106歳を迎える10月4日のバースデイイベントを意図し、企画されていた。

会は冒頭、主催であるヴォイス・ファクトリイ代表取締役の輪嶋東太郎氏が挨拶。「日野原重明氏の追悼、そして最後の書籍出版記念の演奏会に、ようこそお越しくださいました。今年、7月18日、私たちの愛する日野原重明先生がこの地上でのすべての時間を終えられて、天に召されました。最後にこのご本『生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉』という本を残してくださいました。この会場は去年の12月より借りておりまして、日野原先生と一緒にどのようなイベントをしようかと楽しみにしておりました。残念ながら今日は先生は客席にはいらっしゃいませんが、どこかに必ず先生がいらっしゃると信じて、先生が伝えたかった、私たちに与えてくださったことを、この場に集まってくださったお一人お一人と心の底から分かち合いたいと思います。」と語り、開幕した。

輪嶋氏は、第1部に日野原氏の次男の夫人であり、最後の身の回りの面倒を見ていた日野原眞紀さんを迎え、日野原氏との思い出を語るトークショーを展開。眞紀さんは「あまり実感がないのですが、100歳まで本当にお元気で、死ぬことはないんじゃないかと思っていました。最後まで思考もしっかりされていました。なでしこジャパンが大好きで、彼女たちが海外遠征から帰国するときに、まるで孫のことのように心配していらっしゃったりしました。まず人のことを考える、人への気遣いをすることが自然に身についている方でした。」と語った。

日野原重明

その後、毎日放送アナウンサーの水野晶子が書籍の一部を朗読。この書籍の出版のため、1年以上インタビュー密着してきた輪嶋氏は「先生は『残された時間の中に我々の命はある。その残された時間をどのように使うか、誰のために使うかで、その人がどういう生き方をしてきたかが分かる』とおっしゃいました。先生は私たちに多くの時間をくださいました。命がけで大事なことを我々に教えてくださいました。私たちはしっかりとこのメッセージを受け止めて、先生にお時間をいただいたものとして、より多くの人たちや社会にバトンタッチをしていく使命があるんだなと感じます。」と話し、第1部を終了した。

第2部は、イタリアのミラノを拠点として活躍するオペラ歌手・櫻井まゆこが、日本で活躍するルーマニア出身のピアニスト・クリスティアン・アガピエの伴奏でカミーユ・サン=サーンスとジュゼッペ・ヴェルディのオペラの一部を披露。そして2016年より<日野原重明プロデュース ベー・チェチョル コンサート>にも参加しているギタリスト・アントニオ古賀が登場。映画音楽の名曲の数々をメドレーで披露し、会場からは大きな拍手が送られた。続いては人形劇俳優の平常(たいらじょう)が登壇。「日野原重明先生、105年以上にわたるこの地上での人生、本当にお疲れ様でした。厳しい時代を生き抜き、確固たる信念のもとにお仕事をされてきた先生のお言葉は、今を生きる私達に生きる意味や希望を与えてくださります。」と語ると、書籍の一節を朗読し、クチスティアン・アガピエのピアノとともに、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子様』の別れのシーンを人形劇で演じ、感動の拍手を呼び起こした。

輪嶋氏は、日野原氏がベー・チェチョルの歌を聴いて「102歳の決して短くはない人生の中で、歌を聞いて神様を感じたのは初めてのことだ」と話したエピソードを語ると、「先生は『残りの時間を世界平和のために使いたい、そのためにこの歌を知らせたい』と、<日野原重明プロデュース ベー・チェチョルコンサート>を全国各地で10回以上、開いてくださりました。」と話し、ベーを紹介した。ベーは、アジア最高のテノールと称されながらも甲状腺がんを患い、声帯の神経と横隔膜の神経を全て切断。2006年に日本で手術を行い声を取り戻すと、2008年にカムバック。現在、奇跡のテノールとして世界各地で活動中の韓国出身のオペラ歌手だ。ベーはクリスティアン・アガピエのピアノで、山田耕作の「この道」や韓国民謡の「アリラン」など4曲を披露すると、アンコールに応えて、生前、日野原氏の手を握って歌ったこともあるという「アメイジング・グレイス」を歌唱。さらにコンサートでも共演している、滋慶学園 東京スクール・オブ・ミュージックの合唱団も加えて「花にねむれ」を歌うと、会場は拍手喝采の嵐となった。

演奏会はその後、日野原氏が作詩・作曲の「あいのうた」を日野原氏の指揮の映像とともに、ベーがアカペラで歌唱し、ラストは出演者全員と会場客席が一体となって「ふるさと」を大合唱し、終演を迎えた。

ベー・チェチョル

◆ベー・チェチョル 日本コロムビアオフィシャルサイト

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