【生き字引に訊け!】第1回 砂田実さん「輝く! 日本レコード大賞」プロデューサー

【生き字引に訊け!】第1回 砂田実さん「輝く! 日本レコード大賞」プロデューサー

運営委員会による“浄化作戦”と「カンパイおじさん」

ーー運営については、運営委員会という組織があったそうですが?

はい。必ず僕と野中さんが出ていました。話し合いの中でも、違うと思う意見には「それは違いますよ」とはっきり言えました。全員、僕が指名して、音楽プロデューサーの小西良太郎をはじめとして、新聞社、雑誌社の信頼できる人たちで、10人位いました。とにかく、選考はTBSは一切関係ないことにしよう、という原則を僕が作りました。そうしないと、TBSの人間が色々言われて被害を受けることもあるから、全部切り離したんです。それで、運営だけTBSでしっかりやろうということにしました。さすがだと思ったのは、服部良一さんと古賀政男さんで、スタートしたら、お二方ともそれから一切ノータッチ。たまにパーティに呼んでくださるだけで、僕達に何を言われるわけでないし、それから諏訪社長もわかっていて、あれはどうだとか、一切なくてね、僕は僕の好きなようにやらせてくれないと仕事をやらないですから。それで、まあまあうまくいってですね。レコード大賞を獲ると、アーティストの興行の値段が2倍にも3倍にも上がるようになって、それで色々な人が現れるようになったんです。

ーー選考はどんな方が担当されたのでしょうか?

選考は記者に依頼しました。ジャーナリストなら、賄賂をもらったり、接待に溺れたりしないと考えたからです。ところが、当時、音楽評論家と称する変な奴がいっぱいいたんです。これがね、知識はあるんだろうけど、お金に弱い人達でね、その中で、大ボスがいたんですよ。平井賢っていうレコ大審査員の1人で、こいつが悪くてね。いつのまにかプロダクションが全部、まず平井のところに行くんですよ。それでお金を渡したり、年末が近づいた10月以降、毎晩銀座でツケで飲ませるわけです。で、平井は何やってるかっていうと、色んなアーティストのパーティに行って、乾杯の音頭を取るだけなんですよ。それで「カンパイおじさん」と言われていて。見過ごせない雰囲気になったので、僕は“浄化作戦”を進めたんです。

【生き字引に訊け!】第1回 砂田実さん「輝く! 日本レコード大賞」プロデューサー

【生き字引に訊け!】第1回 砂田実さん「輝く! 日本レコード大賞」プロデューサー

1972年当時の「レコード大賞」台本コピー

ーー“浄化作戦”については、著書にも詳しく書かれています。「カンパイおじさん」の使者(いかにも裏社会の親分風)に「人を切る時は骨まで切らないと、あんたやられるよ」と脅されたり、銀座の「姫」(※作詞家・山口洋子が経営していた伝説のクラブ)で「カンパイおじさん」に殴られそうになったりと、大変な思いをされていますね……。

草創期はそういうくだらないことがたくさんあったんですよ。それでだんだんと過激化してきたんですが、とうとう平井をひきずり降ろすことに成功して、ひきずりおろすと言っても、運営委員に格上げしたんです。そしたら彼は勘違いして、運営委員と選考委員と兼ねてると思っていた。今でも覚えてるけど、帝劇でリハーサルをやっていたら、賞状を渡す役割を、僕が他の人に指名してやってもらったら、平井が「砂田―!!」って怒鳴るんですよ、「何で俺じゃないんだ!」って。「だって先生は運営委員なんだから駄目ですよ、これは審査委員長が渡すんですから」って答えたら、わめきまくってね。周りのADや皆、固まってましたけど、怒鳴るだけ怒鳴って帰っていった。その時、正直言って、このジジイの花も俺が摘んじゃったな、と思いましたけどね。でも彼一門をその時全部飛ばしましたから。代わりに誰を推したかっていうと、雑誌とか新聞の音楽担当者に全部入れ替えたんです。そしたらある事務所の人から、「砂田さん、人数が増えただけで同じですよ」って言われたけどね(笑)。雑誌社の中にもいますから、色々ね。でもまあ、それでだいぶ良くなりました。

ーーたくさんの苦労を経験され、砂田さんがレコード大賞運営の礎を築かれたのですね。レコード大賞は大イベントに成長し、数々の名曲が伝説を残します。1977年には視聴率50%越えを記録。ちなみにその年の大賞は沢田研二の「勝手にしやがれ」(作詞:阿久悠 作曲:大野克夫)です。砂田さんはレコード大賞と並行して他の音楽番組も担当され、TBS以外のショクナイ(内職)もされていたそうで、相当なお忙しさですね。

当時、先輩もいないし忙しくて帰れないわけですよ。それでショクナイもして、結構遊んでもいたんですよ。だからよく生きてると思ってね。今86でしょ。4度の結婚、立ち上げた会社の倒産とか、色々なことがありました。7年前には脳梗塞で入院したんですけど、その時に初めてじっくり物を考える時間ができたんです。その後、昭和のスタンダード・ポップスのコンサートの構成・演出や、テレビ番組の企画・演出、トークショーの企画・出演など、やりたいことはやってきました。今は音楽プロデューサーの佐藤剛さんにご協力いただき、新しい本を書いているんです。

ーーそれは楽しみです! ぜひお元気で活動を続けられますよう願います。

ジジイのくせに、先に仕事の目標がないと駄目なの。だから本を書いたりすればね、当面はいいじゃないですか。貧乏性というかなんていうか、暇なのは駄目ですね。

(2017年12月11日 都内某所にて)

「第59回日本レコード大賞」

放送日時:12月30日 (土) 夜5時30分〜生放送 (一部地域を除く)
放送局:TBSテレビ
総合司会:天海祐希、安住紳一郎 (TBSアナウンサー)
ナレーション:ジョン・カビラ

◆「第59回日本レコード大賞」各賞発表、氷川きよし、三山ひろし、中澤卓也、安室奈美恵、平尾昌晃も受賞
◆輝く!日本レコード大賞 オフィシャルサイト

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