奥村チヨがラストアルバム発売記念イベント開催「やりきったと思う」

奥村チヨ

奥村チヨが3月4日、東京・渋谷区の代官山蔦屋書店でトーク&サイン会を開いた。奥村は1965年のレコードデビューから52年となる今年の1月に、年内いっぱいでの歌手活動の卒業を発表していた。この日のトーク&サイン会は、1月24日に発売されたラストアルバム『ありがとう~サイレントムーン』(ユニバーサルミュージック)の記念企画。アルバム購入者の中から先着で約100人のファンが、最後となりそうな交流の場に駆け付けた。

大きな拍手と声援に迎えられた奥村は「嬉しい。ありがとう、ほんとに。“チヨちゃ~ん!”なんて言われちゃってどうしよう」とはにかんで挨拶。「最近の私の、一番若いファンは6歳なんです。『恋の奴隷』の時からのファンの方も、岡山からいらしていただいて、感激です」と喜びを表した。トークショーの司会進行役は、娯楽映画研究家でオトナの歌謡曲プロデューサーの佐藤利明。佐藤は「長い歌謡界の中で、奥村チヨさんという存在は光輝いてきました」と語り、内容の濃い解説を交え、奥村のデビューから現在までを振り返った。

奥村は、レコードデビューの前年の1964年に、オーディションに合格して小野薬品の飲料「リキホルモ」のコマーシャルソングを歌っている。佐藤がその音源を流すと奥村もびっくり。「声が若い! 17歳の声ですね。当時、すごいパンチがあるって言われたんです」と懐かしんだ。この歌を聴いた東芝の伝説のディレクター・草野浩二(坂本九、弘田三枝子らを手掛ける)が奥村の声に惚れ込んだことが、デビューのきっかけになったという。

奥村からは自身の楽曲についての思いも聞くことができた。1967年の「北国の青い空」については「ベンチャーズのインスト曲だったんです。私が歌うために書かれた曲ではないので難しくて。音域も広過ぎて広過ぎて。でもこの曲を歌いたいがために、毎日練習しました。デビューから10年位は忙しくて、毎日睡眠時間が2時間くらいだったんですけど、それでも寝る時間を削って練習しました」、1969年の「恋の奴隷」については「当時、私は子供子供していて、綺麗な世界の歌を歌いたかったところに、『悪い時はどうぞぶってね』という斬新な歌詞を歌うのはつらかった。NHK紅白歌合戦では『ぶってね』を『言ってね』に替えればOKだったんです。ところが、私のディレクターさんから『歌詞を替えてまで出る必要ないよ』と言われて、単純だから『そうね、やめよう』なんて言っちゃって(笑)」、夫で作曲家の浜圭介との出会いとなった1971年の「終着駅」については「『恋の奴隷』から大人の歌に脱皮したかった時です。この歌を出させてもらえなかったら、歌手をやめようとも思いました。彼(浜圭介)もヒット曲が出なくて悩んでいた時の曲です」と振り返った。

佐藤の解説によると、「終着駅」のカップリング「気ままぐらしの女」は、作詞家の阿久悠、作曲家の筒美京平コンビによる作品。香港映画『死亡の塔』の劇中では、クラブ歌手がほぼフルコーラスで歌っており、ブルース・リーファンにはよく知られ、世界中で探されている曲なのだという。奥村が「信じられない! 自分でも知らないところで気に入っていただけているなんて感激です。幸せ!」と驚き喜ぶ姿を見ることができたのも貴重だった。自身の曲には阿久悠作品が無いと思っていたそう。「佐藤さんの方が私に詳しい。ファンの方のほうが私のことをよく知っているんです」との感想に、客席から笑いが起こった。

奥村チヨ

その後、予定にはなかった歌も披露。大ヒット曲「終着駅」の、95年バージョン(1995年に発売のオーケストラによるアレンジ)と、新曲「サイレントムーン」の熱唱に、涙を流して聴き入るファンもいた。卒業を惜しむ声には「皆様にはたくさん元気をいただいてきました。自分のわがままでやめてしまうのは申し訳ない。なんか涙が出てきちゃう」と答え、サイン会では一人一人と心のこもった交流をし、ファンを喜ばせた。イベント終了後の取材では「まだ歌えるうちに、『チヨちゃ~ん!』と言っていただけるうちに卒業したい。自分が燃える楽曲にも出会えましたし、やりきったと思います」と明かした。

ラストアルバムは、CDとDVDの2枚組で、CDには、デビュー時からの代表的ヒットナンバーに加えて、今回、浜圭介が書き下ろした新曲「サイレントムーン」(詞・渡辺なつみ)の全16曲を収録。DVDには、「サイレントムーン」のミュージックビデオや1960年代~70年代の貴重なヒストリービデオも収録されている。

取材・文◎仲村 瞳

奥村チヨ『ありがとう ~ サイレントムーン』

奥村チヨ / ありがとう ~ サイレントムーン
2018年1月24日発売
UPCY-7465 / 3,900円(税込)
[ CD収録楽曲 ]
1. サイレントムーン
2. 私を愛して
3. ごめんネ・・・ジロー
4. 北国の青い空
5. 涙いろの恋
6. 恋の奴隷
7. 恋泥棒
8. くやしいけれど幸せよ
9. 嘘でもいいから
10. 中途半端はやめて
11. 終着駅’95
12. 別離の讃美歌
13. 何かありそな西銀座
14. バスが来たら
15. 浮雲
16. サイレントムーン (カラオケ)

[ DVD収録楽曲 ]
サイレントムーン(Music Video)
奥村チヨ(Memorial Video)
浮雲(Music Video)

関連リンク

◆奥村チヨ オフィシャルサイト