カルト歌謡カルタ【の】山崎ハコ‬「呪い」

カルト歌謡カルタ【の】山崎ハコ‬「呪い」

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「呪い」

1979年発表
歌:‪山崎ハコ‬
作詞・作曲:‪山崎ハコ
編曲:石川鷹彦

「♪コンコン コンコン 釘をさす」。曲中11回も登場するフレーズ。わら人形に釘をさす様子と心境を描いたこの曲は、シンガーソングライター・‪山崎ハコ‬の5枚目のアルバム『人間まがい』収録曲である。

‪山崎ハコは、同じ1975年デビューのシンガーソングライター・中島みゆき、森田童子と並び、“暗い歌手”と称された。暗い印象を持たせるために当時の所属事務所から親兄弟や親族など人との交わりを禁止されていたという。「暗すぎる」と評され自信をなくしかけた時に「山崎ハコの暗さは舞台の芝居に不可欠」と救ったのが女優の渡辺えり。所属事務所の倒産で半ばホームレス状態になった山崎ハコに楽曲制作の場を与えたのも彼女だという。俳優の原田芳雄から言われた「ハコの歌は縁歌だな。縁を感じるから。えにしの“縁”だぞ」という言葉を励みに制作した24枚目のアルバム『縁-えにし-』(2012年発売)は、同年の第54回日本レコード大賞で優秀アルバム賞を受賞している。‬

「呪い」の編曲を担当したギタリスト・編曲家の‪石川鷹彦‬は、1960年代から活躍。アコースティック・ギターの名手でありながら、バンジョー、フラットマンドリンなどの弦楽器の演奏、シンセサイザーのプログラミングも行ってきた、日本におけるマルチプレイヤーの先駆者。‪吉田拓郎やアリス等のバックバンドで演奏、かぐや姫、風、アリス等の編曲を担当し、数多くの楽曲を世に出している。‬

‪大槻ケンヂ(筋肉少女帯)がラジオで「呪い」は「一番暗い曲」と評しながらも、「声が悲しいんですけど、 本人は明るくて良い人なんですよ」と、ライブ共演時のエピソードを語っている。‬山崎ハコは現在も、夫で作曲家・編曲家・ギタリストの安田裕美と共に精力的にライブなど音楽活動を行なっている。

解説・イラスト:はらめがね