カルト歌謡カルタ【あ】太子乱童「愛の絶唱」

カルト歌謡カルタ【あ】太子乱童「愛の絶唱」

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「愛の絶唱」

1971年発表
歌:太子乱童
作詞:高月ことば
作曲:鈴木英治
編曲:北野ひろし

太子乱童は、1968年に上京後、鈴木企画の社長に見出される。「恋はパイプの薄煙り」(1958年/歌:三船浩 作詞:藤間哲郎 編曲:山口俊郎) や、「アンコ悲しや」(1960年/歌:松山恵子 作詞:藤間哲郎 編曲:増田幸造)などの作曲を手掛けた作曲家・増田幸造に師事して、1971年にシングル曲「愛の絶唱」でデビューする。

この曲の最大の特徴は、声色と歌い方が、サビで突然変わるところ。「♪君の かわいい笑顔 涙」、「♪君の さびしい横顔 濡れた瞳」、「♪君の すてきな黒髪 紅い唇」ーードスの効いた歌声に深みのある演歌のような歌い方で、去って行った彼女=“君”を表現する。抑えきれない感情がほとばしったかのような迫力と豹変ぶりに驚きと恐怖すら覚える。まさに“絶唱”である。P-VINEの『幻の名盤解放歌集』1周年を記念して1993年に発売されたアルバム『幻の名盤解放歌集*テイチク編 シューベルト物語』に収録されている。

小堺一機と関根勤のコンビでパソナリティを務めたTBSラジオバラエティ番組に、珍妙な曲を集めるコーナー「コサキンソング」の一つとして紹介されている。ちなみに、「マツケンサンバII」(2004年/歌:松平健 作詞:吉峰暁子 作曲・編曲:宮川彬良)もコサキンソングとして紹介されたことが、大ブレイクに一役買っている。

作詞の高月ことば(大正10年生まれ)は、東芝レコードの専属作詞家第1号。後にテイチクに移籍し渡哲也の「東京流れ者」(昭和40年/作曲:不詳 編曲:山倉たかし)や、春日八郎、仲代達矢などの作品も手がけている。作り手の方も、マニアック感満載である。

解説・イラスト:はらめがね