カルト歌謡カルタ【め】五十嵐祐子「目黒の実家へ帰ります」

カルト歌謡カルタ【め】五十嵐祐子「目黒の実家へ帰ります」

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「目黒の実家へ帰ります」

1986年発表
歌:五十嵐祐子
作詞:荒木とよひさ
作曲:泰葉
編曲:西崎進

「♪欲しがる私が いけないの 夜がさみしい 夜がさみしい 夜がさみしいの」。ストレートに性欲を表現した歌詞が、演歌風の曲調に合わせて響く。「♪もっと咲きたい 花のように 洗濯女じゃ むなしいの 夢がないのよ 夢がないのよ 夢が欲しいのよ」。夫の陰でいることを望まず、夢を抱き表世界に出たいという欲が強く表現されている。この曲を歌う五十嵐祐子は、歌手活動の他にタレントとしてバラエティ番組やCMにも出演。レコードジャケット裏面に記された彼女の趣味・特技は、ドライブ、ジグゾーパズル、ひまつぶし。

作曲を担当したシンガーソングライターでプロデューサーの泰葉は、1981年に自身が作曲したシングル曲「フライディ・チャイナタウン」(作詞:荒木とよひさ 編曲:井上鑑)で歌手デビューし、ヒットを記録する。また、少女隊「YES IT’S MY HEART」(作詞:秋野優美 編曲:佐藤準)の作曲とボーカルディレクションを担当。松本伊代の「夏のRELIEF」(作詞:森田由美)の作曲も行なっており、この2曲は泰葉がセルフカバーしている。泰葉が他の歌手に提供した楽曲は3作品のみで、「目黒の実家へ帰ります」はその中の貴重な1曲である。

作詞を担当した作詞家・荒木とよひさは、1970年代、フォークグループの伝書鳩で活動、ベースと楽曲の作詞を主に担当。作詞家に転向してから、日本有線大賞を1984年の第17回から1986年の第19回まで3年連続で受賞したテレサ・テンの「つぐない」、「愛人」、「時の流れに身をまかせ」(3曲共 作曲:三木たかし 編曲:川口真)をはじめ、堀内孝雄の楽曲など数多くのヒット曲を手掛けている。2005年に紫綬褒章を受章。

解説・イラスト:はらめがね