カルト歌謡カルタ【し】愛川欽也「死ね死ねブルース」

カルト歌謡カルタ【し】愛川欽也「死ね死ねブルース」

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「死ね死ねブルース」

1975年発表
歌:愛川欽也
作詞:奥山侊伸
作曲・編曲:高田弘

「♪朝目が覚めたら死ね」。強烈なフレーズからスタートするこの曲は、愛川欽也の1975年発売のLP『欽也一夜物語 泣く泣くかぐや姫』収録曲。「♪なんとなく生きてたお前死ね 明日もきっと死ね ダラダラ生きるだろ死ね」、「♪何かが足りないよ死ね 何かが欲しくて死ね」、そうする位なら死んだ方が良い、逆にそうしないように生きろとも捉えられる。この歌詞を愛川欽也が魂の叫びとも言える歌い方で表現しており、強いメッセージ性を感じる。歌の中に約52回「死ね」という言葉が登場する。これだけ「死ね」と言う中、「♪あんなに空が綺麗に青く澄んでるというのに」、「♪天国探して地獄を見つけた」という最後に「死ね」が付かないフレーズも心に響く。

声優、俳優、司会者とマルチに活躍して、“キンキン”の愛称で親しまれた愛川欽也。優しく温かいイメージが定着しているが、そこからは想像出来ないR&B調のこの楽曲は愛川欽也の異色作にして、名作と言える。愛川欽也の他の楽曲には、菅原文太と主演を務めた映画『トラック野郎』シリーズ(1975年〜1979年 全10作 配給:東映)の主題歌で、2人のデュエット曲「一番星ブルース」(1975年 作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:ダウン・タウン・ブギウギ・バンド 松木優晴)などがある。

歌詞を手掛けたのは、放送作家・作詞家・ラジオ・パーソナリティーの奥山侊伸。愛川欽也が司会を務めた紀行クイズ番組『なるほど!ザ・ワールド』(フジテレビ系列 1981年から1996年まで放送)の構成を務め、愛川欽也のラジオ番組への出演や、海外ロケ中の休日に2人で旅行するなど親交が深い。作詞家としては、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「カッコマン・ブギ」(1975年 作曲:宇崎竜童 編曲:ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)はじめ個性的な楽曲を手掛けている。

解説・イラスト:はらめがね