カルト歌謡カルタ【ひ】間寛平「ひらけ!チューリップ」

カルト歌謡カルタ【ひ】間寛平「ひらけ!チューリップ」

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「ひらけ!チューリップ」

1975年発表
歌:間寛平
作詞・作曲:山本正之
編曲:武市昌久

ミリオンヒットを記録したお笑い芸人・間寛平の歌手デビューシングル曲。元々はレコード会社・徳間音楽工業(現・徳間ジャパンコミュニケーションズ)が、当時絶大な人気を誇った落語家・司会者の桂三枝(現・桂文枝)に歌ってもらおうと吉本興業へ持ち掛けた楽曲。当時の吉本興業社長・林正之助が、「こんな歌は三枝に失礼や。寛平にでも歌わしとけ!」と言い放ち、間寛平が歌うことになったという。売れると思っていなかった吉本興業は細かな契約を結んでおらず、歌唱印税は24万円だけ。「ちゃんとやってたら、それの100倍、2,000万円位もろてたんちゃう?」と、間寛平は後に方々で語っている。

曲の最初に、1970年代当時のパチンコ屋定番曲「軍艦マーチ」が流れる。「パチンコは、一日の疲れを癒すストレス・鬱憤の捨て所。アナタの腕の見せ所。一球一魂打ち込む気迫に応えて、開きますチューリップ。千両箱一杯お出しになれば、アナタワクワク、お店ハラハラ…」と、お為ごかしの場内アナウンスが響く。その後に伴奏が入り、「♪軍艦マーチに誘われて~」と歌い出す。パチンコ台の釘を睨みながら狙い打ち、一玉毎に一喜一憂する様子がよく表現されている。

間寛平にとってこの曲は代表作だが、作詞家・作曲家の山本正之にとっても、架空のストリップ劇場を表現した「うぐいすだにミュージックホール」(1975年 歌唱:笑福亭鶴光 編曲:中村弘明)と共に自身が作詞・作曲を手掛けた代表的な二大コミックソングとなった。山本はこの曲の大ヒットをきっかけに、アニメ『タイムボカンシリーズ』(1975年~ 制作:タツノコプロ)の音楽担当に抜擢され、その後も数多くのアニメソングを手掛ける。

解説・イラスト:はらめがね