2019年9月24日(火)東京・渋谷 NHKホールで、日本音楽著作権協会(JASRAC)が主催する<JASRAC創立80周年記念 こころの歌人たちスペシャル 歌よ未来へ>が開催された。このコンサートは、日本の歌謡界に偉大な功績を残してきた作詞家・作曲家をクローズアップして、その作品と人物像を時代背景に触れながら紹介していく。2006年から2018年まで続いた<昭和の歌人たち>の続編であり、3回目となる今回は、JASRAC創立80周年を記念するスペシャルとして開催。司会は由紀さおりと中川晃教が務め、五木ひろし、AKB48、荻野目洋子、ゴールデンボンバー、坂本冬美、辰巳ゆうと、氷川きよし、吉幾三、Little Glee Monsterの9組が、時代を越えて愛されてきた名曲の数々を披露した。
オープニングは、昭和21年のヒット曲「リンゴの唄」(並木路子)を出演者全員で歌唱。ジャンルを越えて集結した出演者達を観て、どよめき交じりの歓声と手拍子が起こった。同曲は戦後の日本映画の第1号『そよかぜ』の主題歌・挿入歌で、作詞はサトウハチロー、作曲は万城目正。当時、歌手の並木は曲のヒットにより、家を建てることができたが、サトウは「歌を作った僕達がなぜ正当な報酬がもらえないんだろう?」と考え、その後、仲間たちに声をかけて作家の地位向上に尽くしたという話も紹介される。著作権が確立される原点となった意義深い曲である。
AKB48
中川晃教
この日の選曲については、「カラオケで歌われたり、テレビやコンサートで使われたデータを集計し、最も人気があった曲を中心にお送りします」と中川。「平成の時代に愛された歌からスタートしたいと思います」という由紀の紹介から、AKB48による「AKBメドレー」(「ヘビーローテーション」「365日の紙飛行機」「恋するフォーチュンクッキー」)、「名もなき詩」(Mr.Children)を中川が、「CAN YOU CELEBRATE?」(安室奈美恵)をLittle Glee Monsterが、「糸」(中島みゆき)を由紀と五木ひろしが歌うという、レアな時間となった。
Little Glee Monster
五木ひろし
続いて、「著作権使用のデータをもとに、優秀な作品の表彰が始まったのが1982年、昭和57年だったんですね」と中川。「その頃はカラオケがブームでございました。カラオケでよく歌われていた曲が上位にランクインしたのですね」と由紀が語り、その頃の大ヒット曲を作詞・作曲した人物として吉幾三が登場。吉は自身の代表曲「雪国」(1986年発売)について、当時、「テレビを見ていて、ああっ、かかっとる!ってね。知らない間に売れていたんですね」と振り返った。現代も多くの人々にカラオケで愛されている演歌の中から、「北酒場」(細川たかし) を氷川きよし(五木ひろしがハモリで参加)が、「浪花節だよ人生は」 (細川たかし)を辰巳ゆうとが、吉幾三が、自身の曲「酒よ」と「雪國」を、「居酒屋」(五木ひろし、木の実ナナ)を五木ひろしと坂本冬美が熱唱。改めて曲の良さを感じさせてくれる名歌唱の連続に会場の熱も高まる。
氷川きよし
辰巳ゆうと
吉幾三
坂本冬美
平成に入って、子供から大人まで魅了した曲のコーナーでは、オカリナ演奏の弓場さつきがジブリアニメメドレーを演奏。さつきという名は、『となりのトトロ』の草壁サツキから命名されたそう。深みのある美しいオカリナの音色を会場中に響かせた。続いて、荻野目洋子が登場。荻野目は1985年に発売された「ダンシング・ヒーロー」が2017年にリバイバルヒットしたことについて、「新しい世代の方に歌い継がれるなんて夢にも思っていなかったので、本当にびっくりしました」と明かした。巨大なミラーボールの下、6人のダンサーを従えて「ダンシング・ヒーロー」をキレのあるダンスとともにパワフルに歌い上げた。途中からゴールデンボンバーがダンスに参加すると会場に笑いが起こり、そのままゴールデンボンバーの「女々しくて」という流れに、若い世代の観客達からいっそう大きな歓声が贈られた。「女々しくて」は、2009年に発売され、2013年度に著作権使用料の分配額が国内最多を記録。2014年にJASRAC賞を受賞している。作詞と作曲を手掛けた鬼龍院翔は、「六本木でバイト中、カップラーメンを作っている時に降りてきた」と誕生の瞬間を振り返る。このコーナーの締めは「だんご3兄弟」(速水けんたろう、志森あゆみ)を 中川晃教、鬼龍院翔、辰巳ゆうとが息の合った歌唱で盛り上げた。
弓場さつき
荻野目洋子
ゴールデンボンバー
中川晃教、鬼龍院翔、辰巳ゆうと
フォーク・ニューミュージックの名曲コーナーでは、由紀の「氷川さん、最近はロックも歌われていますが、フォークやニューミュージックを歌いたいという思いはおありですか?」という問いに、「ございますね。演歌を中心としてジャンルを広げていきたいです」と答えた氷川は、「乾杯」(長渕剛)を心のこもった歌唱で聴かせた。「神田川」(南こうせつとかぐや姫)は由紀さおりが、「涙そうそう」 (夏川りみ)はLittle Glee Monsterが、坂本冬美は自身のヒット曲「また君に恋してる」 を歌唱した。
由紀さおり
中央が日本音楽著作権協会会長・いではく
終盤は、スペシャルゲストで、日本音楽著作権協会会長で作詞家のいではくが登場し、協会の活動を紹介。そこから、80周年記念のクライマックスとして、歴代の協会会長達が手掛けた曲コーナーへ。いではく作曲の「北国の春」(千昌夫) を吉幾三が、古賀政男作曲の「柔」(美空ひばり)を氷川きよしが、西條八十作詞の「王将」(村田英雄)を五木ひろしが、吉田正作曲の「いつでも夢を」(橋幸夫、吉永小百合)を由紀さおりと中川晃教が披露。最後は出演者全員で、昭和と平成それぞれを代表する大ヒット曲から、「上を向いて歩こう」(坂本九)と「世界に一つだけの花」(SMAP)で、大いに盛り上がり、今回限りのスペシャルなステージを締めくくった。
このコンサートの模様は、NHK BSプレミアムで12月1日の19時30分より放送予定。なお、<こころの歌人たち>の観覧は応募招待制で、日本音楽著作権協会のホームページにて、不定期で告知している。
取材・文:仲村 瞳
2019年9月24日(火)東京・渋谷 NHKホール
[セットリスト]
01.「リンゴの唄」出演者全員
02.「AKBメドレー」AKB48
03.「名もなき詩」中川晃教
04.「CAN YOU CELEBRATE?」Little Glee Monster
05.「糸」由紀さおり、五木ひろし
06.「北酒場」氷川きよし
07.「浪花節だよ人生は」辰巳ゆうと
08.「雪國」吉幾三
09.「酒よ」吉幾三
10.「居酒屋」五木ひろし、坂本冬美
11.「ジブリアニメメドレー」弓場さつき
12.「ダンシング・ヒーロー」荻野目洋子
13.「女々しくて」ゴールデンボンバー
14.「だんご3兄弟」中川晃教、鬼龍院翔、辰巳ゆうと
15.「神田川」由紀さおり
16.「乾杯」氷川きよし
17.「涙そうそう」Little Glee Monster
18.「また君に恋してる」坂本冬美
19.「北国の春」吉幾三
20.「柔」氷川きよし
21.「王将」五木ひろし
22.「いつでも夢を」由紀さおり、中川晃教
23.「上を向いて歩こう」出演者全員
24.「世界に一つだけの花」出演者全員