【特別座談会】うちの師匠、どうでしょう!? 三山ひろし、走裕介、桜井くみ子、松尾雄史が語る巨匠の姿(後編)

【座談会】うちの師匠、どうでしょう!? 三山ひろし、走裕介、桜井くみ子、松尾雄史が語る巨匠の姿(後編)

辛い時期も乗り越えれば全部自分の糧になる

ーーそれでは、うちの師匠はここが一番素晴らしい、ということと、他の師匠の羨ましいところはどんなところでしょう?

走「叱る時はめちゃくちゃおっかないんですけど。常に優しくて。結構、叱るのって体力いるじゃないですか。真剣に叱ってくださる。で、やっぱり優しさがないとそうできないと思うんですけど。普通、弟子だと、あっちこっちに行って、飯はこれで適当に食っとけとか言うんじゃないかなと思うんですけど、うちの師匠って、いいものと悪いもの、食事1つにしても、いいものとあんまり美味しくないものと、これをちゃんと知っとけっていう。俺のところにいる間は、『いいもの食っとけ』って言うんですよ。で、デビューしてから、『たぶん大変な時期も続くだろうから、俺のところで食った最高のものを、自分が稼いだお金で食べられるようになるように今食べとけ、味を覚えとけよ』って言って。ですから僕、付き人になって、ホテルも同じホテルで、食事も同じものをいただくんですよ。ホテルの寿司屋とか、一貫何千円とかなんですよ。それを惜しみなく食べさせてくれるんですよ。一緒にカウンターに座って板さんに『同じもの出して』って。で、『お前な、どこで食ってる?』、『いや、口で食ってますけど』って思ってると、『お前な、普通に食ってるんじゃなくて頭で食えよ』って。味を覚えとけよってことなんでしょうね。僕らにそういう優しさもありますし、他のお客さんとか来ても惜しみないんですよね。

作曲家協会の会長になったりしたら、その中をうまく潤滑させるように、みなさん、先生方を呼んで、全部飲み食いさせて、JASRACの会長になった時も、地方にはJASRACの支部があるから、全支部回ったんですよ。自腹で。まあ、本当はなりたくなかったんですね。しぶしぶ受けたんですけど、結局なんで嫌かって、会長になると給料がいただけるんですね。『俺はこれいらないよ。これいらないようにしてくれるなら受ける』と。でもそれは、いろんなものを変えていかなきゃならないから、できません、と。『じゃあわかった、これを支部に使う』っていうことで、全支部回ってみんなで飲んで、『君たち、今JASRACで問題ないか?』って聞くんです。『俺たちは君たちのおかげでこうやって作家として食べていけるから。今日は君たちをねぎらいにきた』って。それが終わると、飯食いに行く。だから、相当なものを惜しみなく使っているので、この師匠は本当に、作家としてもすごいけれども、人間として本当に優しいんだろうな、と思いがありましたね。

で、皆様の師匠、いいなあと思うところは、やっぱり、レッスンがある。1回はやってもらいたかったなっていうのはありますね(笑)。デビューの時も、船村先生からは結局なかったですから。自分なりの練習はありますけど、息子さんの蔦将包先生の指導はありましたけど。レコーディングの日も、『先生どうですか』ってディレクターさんとかが言うと『うーん、走君、もうちょっと上手く歌えないかな』って。『はい』と言いつつ、そこを教えてほしいんだよなって(笑)」

一同「(笑)」

走「どうやったら上手く歌えるんだろうって。そこがやっぱり、1回くらいはあったらな、と思いますけど、今となっては叶わぬ夢なので。そこがちょっと、羨ましいかな、というのはありますね」

【座談会】うちの師匠、どうでしょう!? 三山ひろし、走裕介、桜井くみ子、松尾雄史が語る巨匠の姿(前編)

三山ひろし

三山「師匠の一番っていうのは、やっぱりすごく自分の故郷を愛するっていう気持ちですね。これがすごいある方で。僕もそういうところが好きで、弟子になって良かったなと思うところなんですけど。先生は歌手になりたくて単身鞄持って飛び出してきたわけですよね。帰る時は必ず一等車に乗って帰ってくるからっていう夢を持って。歌手になるきっかけはあったんですけど、自分でそれを蹴ってしまって作家の先生になったという話を聞きました。

それ以降もずーっと常に言っていたのは、『君は故郷のことが好きなのか』とか、『帰りたいだろ』とか、『どんな田舎なんだ?』とか、常に故郷のことを僕に聞いてくるんですよ。僕も師匠の故郷の話を色々聞いたりして、とにかく自分の生まれ育ったところを愛するという気持ちがいつでもあって、何かメロディを書いたり思い浮かべたりすると常に故郷の風景をいつも思い浮かべて、書いていたっていうのは聞きました。僕の歌にしても、やっぱり君の故郷はそういうところなんだっていうのを、歌は教えてくれなかったけど、そういうことばっかり聞いてくるんですよね。それは自分の中でたぶん、もう詞が来ていて、僕に合う歌を考えてくれるために、いわゆるインタビューみたいなわけですよ。それを聞いて、どんな思いでどんなことを考えて故郷を出てきて、どういうふうに歌い手になりたくて、なるほどなるほどなっていうのをメロディに乗せていただけるわけですよ。こんなに幸せなことはないなと。それがやっぱり、故郷を愛するとかいう気持ちがすごくあるからこそ、日本の風景になじむような、日本人の心になじむようなメロディがたくさん作れたんじゃないかなって、それが一番じゃないかな、と思いますね。

あと、羨ましいなって思うのは、走さんの言うように、レッスンというのもそうなんですけど。弟子として僕は3年しかなかったので。もっと時間があれば色んなことをもっと聞いて、しっかり自分の頭の中と心に留めて師匠の話をたくさん聞いているうちの一人ですよって、言えるようになりたかったなって。走さんみたいに、時間がもっとほしかったなっていう羨ましさはありますよね。だから、これからもし、お弟子さんになる方がいらっしゃったら、僕は、本当に良く話を聞いて、色んなことを勉強しておくべきだというふうに言いたいですね。辛いこともきっとあると思うんですけど、でもそれはおそらく得るものがいっぱいあるからこそ辛い時期があると思うんです。それは乗り越えれば、全部自分の糧になっているわけで、それも僕はもうちょっと学んでおくべきだったなと、後悔に似ているところもあるんですけど、それはすごい感じます」

桜井「いいな、と思うのは、歌のこともそうですし、礼儀作法というと大げさかもしれないんですけど、例えばたくさんのスタッフさんと、お食事をする時とかありますよね、デビューしたら。そういう時に困らないように、お酒の作り方とか。一升瓶だと、焼酎と日本酒の区別がつかなくって。先生から『日本酒ちょうだい』って言われて、焼酎をなみなみ注いだ時があって(笑)」

三山「それはなかなか(笑)」

走「きついっすねー!(笑)」

【座談会】うちの師匠、どうでしょう!? 三山ひろし、走裕介、桜井くみ子、松尾雄史が語る巨匠の姿(後編)

桜井くみ子

桜井「わからないから、飲まれた瞬間『なんだこれは!』ってなって(笑)。『違うよ、これが日本酒、こっちは焼酎』って、そういうことから教えてくださったり。あと、先生のお宅は大皿料理だったんです。私は実家では小皿、自分の分はこれだけっていう料理の配膳だったんですけど、大皿料理っていうのは、先生が手を付けるまで付けられないっていうのはわかりますけど、どうしたらいいかわからなくて、食べられないんです。で、ずーっと食べないでいると、逆に食べないのも気を遣わせちゃうからダメだって。だからそういう時は、例えば自分が一番目上の方に、取り分けて。そうすると自分も食べられるでしょっていうふうに、そういうことを教えてくださったり、歌以外でも色んな基本のことを教えてくださって。

すごく家族を大事にする先生なので、奥さんのこともそうだし、ここにきたらファミリーだって。だから、お食事している時も色んなお話ししてくださいましたし。そういうことがあったので、故郷から出て来ていても、実家に帰れなくてもあったかくしていただいたんで、あまり寂しくなかったなっていうふうに感じます。羨ましいなって思うとこは、自分が男だったらどうだったのかなって思います。やっぱり、男同士にしかわからない気持ちとか、深いところまではわからない部分もあったりするので、先生ご自身もやっぱり遠慮しているところもあると思いますし。私が男だったらどうだったのかなっていうのは、お話伺っていて羨ましいなと思いますね」

松尾「うちの先生は弟子を取るのが大好きで。全国のカラオケ大会に行って、いいのがいたらひっぱってこようかなっていう、すごく育てるのも好きですし、弟子思いですね。僕もデビューする前に、『デビューしたらお前、忙しいから、色んなところ行けないから』って言って、最初は温泉に連れていってもらいましたからね。温泉行って、今度、グアムに行こうってグアムに連れて行ってもらって、それで今度、ハワイに行こうって。ハワイに行った時は本当に突然言われたんですよ。

『お前、来週ハワイ行くぞ』って。ハワイにカラオケ大会の審査員で行くからお前ついて来いよって言って、アルバイトをやっている身で一週間前は急に休めないじゃないですか、でも会社の人も、僕が何をやろうとしているか理解があったので、行かせてもらえましたけど、何でいきなり言われたのかなって思ったら、その、ハワイに全国のカラオケの先生が日本から50人くらい集まるということでした。デビューするから披露したかったんだ、っていうのは後でわかったんですけどね。

本当に良く考えてくださるなあ、愛情を持って接してくださるなっていうのは常々思いますね。思い付きで結構行動してくださるので、東京に出てくる時も、初めて会って、じゃあこの日に引っ越して来なさいって。いきなりなんです、なんでも。即行動されますね。それがすごいなあって。行動力がある先生です」

ーー他の師匠を羨ましいと思うことは、どんなことですか?

松尾「今、皆さんのお話聞いていて、僕も、住み込みじゃないですし、近くに住んでいましたし、2年間レッスンに通いましたけど。走さんはすごく濃密な期間を一緒に過ごされて。やっぱりデビューしてしまうと、しょっちゅうは会いませんからね。2ヶ月に一回くらい会えればいいかな? という感じなので、デビュー前にそれだけ親密な先生との信頼関係を作れて、こんなに面白い話題がばんばん出てくるっていうのが、すごい羨ましいなと思いますね」

走「10年分です(笑)」

松尾「一緒に住んでるっていうのはすごいですね」

ーーありがとうございます。それでは、最後の質問になります。今、師匠に、特に伝えたいことは何でしょうか?

走「感謝しかないですね。感謝と、本当にデビュー当時に言っていただいた通りになっていますっていうことを言いたい(笑)。まあ、頑張ります、ということですかね」

松尾「先日、70歳になられまして。氷川さんも山内さんもお弟子の皆さんが揃って古希のお祝いをしたんですけども、やっぱりいつまでもお元気で。やっぱり何かというと先生を頼りにしています。みんなが敵になっても最後は先生だけは味方してくれるっていう雰囲気があります。弟子ってそういう思いがあって、いつまでもお元気でいてくださればなって。それともう、本当にありがとうございます、という思いです」

桜井「これからも、諦めずに、真面目に、しつこく、頑張ります。これからも、よろしくお願いします!」

三山「本当に、素晴らしい作品をたくさんこの世に残していかれた先生なので、そういう先生の作品に、そして、先生の生き方に恥じないように頑張っていきます、ということですね」

ーー素晴らしいお話を、ありがとうございました。


三山ひろし ニューシングル『北のおんな町』

三山ひろし / 北のおんな町
2020年1月8日発売
CRCN-8304 / 1,227円+税
[ 収録楽曲 ]
1. 北のおんな町(きたのおんなまち)
 作詩 喜多條 忠 / 作曲 中村典正 / 編曲 石倉重信
2. 徒情け(あだなさけ)
 作詩 麻こよみ / 作曲 中村典正 / 編曲 石倉重信
3. 北のおんな町 (オリジナル・カラオケ)
4. 徒情け (オリジナル・カラオケ)
5. 北のおんな町 (一般用カラオケ)
6. 徒情け (一般用カラオケ)

走裕介 ニューシングル『流氷列車』

走裕介 / 流氷列車
2020年2月12日発売
CDCOCA-17737 / 1,227円+税
[ 収録楽曲 ]
1. 流氷列車
 作詩 高田ひろお / 作曲 佐瀬寿一 / 編曲 蔦将包
2. 唇は赤き砂漠
 作詩 / 高田ひろお / 作曲 佐瀬寿一 / 編曲 蔦将包
3. 流氷列車 (オリジナル・カラオケ)
4. 唇は赤き砂漠 (オリジナル・カラオケ)
5. 流氷列車 (半音下げオリジナル・カラオケ)
6. 唇は赤き砂漠 (半音下げオリジナル・カラオケ)
7. 流氷列車 (1.5コーラスオリジナル・カラオケ)
8. 唇は赤き砂漠 (2コーラスオリジナル・カラオケ)

桜井くみ子 ニューシングル『風雲太鼓』

桜井くみ子 / 風雲太鼓
2019年12月4日発売
CRCN-8293 / 1,227円+税
[ 収録楽曲 ]
1. 風雲太鼓
 作詞 伊藤美和 / 作曲 原譲二 / 編曲 遠山敦
2. あんたがええねん、好きやねん
 作詞 伊藤美和 / 作曲 藤竜之介 / 編曲 遠山敦
3. 風雲太鼓(オリジナルカラオケ)
4. あんたがええねん、好きやねん(オリジナルカラオケ)
5. 風雲太鼓[男性用カラオケ(2音上げ)]

松尾雄史 ニューシングル『俺の花』

松尾雄史 / 俺の花
2019年12月11日発売
CRCN-8294 / 1,350円(税込)
[ 収録楽曲 ]
1. 俺の花
 作詩:菅 麻貴子/作曲:水森英夫 編曲:杉村俊博
2. 北の旅立ち
 作詩:菅 麻貴子/作曲:水森英夫 編曲:杉村俊博
3. 俺の花(オリジナル・カラオケ)
4. 北の旅立ち(オリジナル・カラオケ)
5. 俺の花(一般用カラオケ)
6. 北の旅立ち(一般用カラオケ)

関連リンク

◆三山ひろし オフィシャルサイト
◆走裕介 オフィシャルサイト
◆桜井くみ子 オフィシャルサイト
◆松尾雄史 オフィシャルサイト

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