【インタビュー】歌謡殿堂レジェンド〜成功への道〜 第二回:橋 幸夫(後編)

橋 幸夫

令和の時代に入ってやりたいことは、世直し

ーー映画界も歌謡界も、昭和の時代が輝いていたように感じます。

橋「そうです。いい時代だったんですよねえ……。30年代以降ですね。この辺りをもう1回、みんなで探らないと本当に壊滅して、歴史がなくなっちゃう国になっちゃう。頑張ってくださいよ(笑)。これは、若い人が集まってみんなで話していったらいいと思うんですよね。知っている人はどんどん死んでいってしまいますからね。早くしないと、もう語り部がいなくなっちゃう」

ーー令和の時代に入り、これからチャレンジしたいことは何でしょうか?

橋「令和2年が60周年、まっただ中になるので、そこに東京オリンピックが2度目来ますよね。僕が何をやるかっていうのは難しいんですけど、そこそこやりたいものもあるし、考え中ではありますけどね。一つは歌のものであるんだけど。歌っていうのはね、それこそ今ビクターがいるけどね。非常にCDが売れにくい時代なんですよね。CDをみんな買わない時代になっちゃっているんで。だから伝えようがないんですよ。僕らの話に戻すと、電信柱にスピーカーがみんな付いてたんだから。ちょっと地方行ったら、商店街に大売り出しや、橋 幸夫ショーって街頭スピーカーで言うし、『潮来笠』も街中で鳴ってるわけ。だからヒットもするよね。そんなこと今ありえないから。

でも、『じゃあどうするんだ』っていうのを本気で考えていかないから、結局メディアも分散化しているし。みんなスマホやパソコンと、コンピューターになっている。これはいい意味ではすごくいいんだけど、本当にこのままだったら、結局なんだろうなってことがいっぱい出てきているよね。事件、事故も含めて。SNSに悪口も書けるし、めちゃくちゃなことを言えるし。思想改革しちゃうでしょ。めちゃくちゃですよ。そうすると辛くて気になるからまた読んじゃう。それに辛くなって、何人もタレントが死んでいるじゃない。これに大人が少しでも気づかないと、間に合わないね。だから『私は何をするんですか?』っていうとこんな説教ばっかりしてても面白くないから、これを面白い方法で表すかたちはないかと、今やろうとしてる企画の中で表していったり、番組を作っていったり、その中で発信していかないと間に合わないね。通じないですよね。CDで訴えて、買ってくださいったって知れてますよ。もうレコード会社自体が売れないって言ってるんだから。じゃあどうすんだってことなんだよ(笑)。

知恵を駆使して色んな力を借りながら、もう世直し時代です。オーバーに言うと、『令和2年から世直ししたい』と僕は思うね。自分でできないから、色んな人に伝えていってもいいし、発見の材料でもいいし、活動の材料でもいいから、橋 幸夫を使ってごらんっていうふうに世直しするのもいいんじゃない? それを若い子からほしいね。『ぜひやってください!』って言われて。普通の既成の番組やってももうつまんないんだよ。しょうがないでしょ、歌を歌ったって。昔の歌はね、若い子が歌えばいいんだし。そういうのがいいと思うな。例えば、大学生の若い子に僕がセミナーなんて言わなくて雑談会でもいいから1960年代の話を聞いてごらんって。たとえ30分でも1時間でも。こういう話ししたら俺止まらないから、いくらでもしゃべるからね。そういうのを作ってくれたら面白いね」

橋 幸夫

ーーYouTubeを始められたら良いのではないでしょうか?

橋「YouTubeでもいいね! 考えてよ(笑)。あなたでもいいんだよ。そうやって変えていかないと『ちょっと見てみようか』っていうきっかけを作ってくれればいいんだよ。そうしたらいろんな恰好してもいいからさ(笑)。なんでも、出られるでしょ。それで、時折、話のわかる、たけし君ぐらいの奴を呼んで、『あんたどう思うんだ?』って話したって良いし、対談相手もいくらでもいるじゃない。彼らも正直言ってわからないんだよ。もう、たけし君なんかもみんな僕らの時代を知らないからね。『リアルでは全然わかんない』って言うんだもの。そうしたら時代劇どうするんだって話だよ。さだまさし君としたっていいんだし、ただ『しょうがない、しょうがない』じゃ、しょうがないだろ、と。それをみんなに伝えていかなきゃ。

現実にね、僕らをやってくれた衣装屋さんや結髪さんや大道具、小道具さんたちみんな路頭に迷っているんです。本当に。時々は連絡があるけど、『橋さん、芝居やってくださいよ』って。芝居、俺一人じゃできないじゃないかと。この間も五木ひろし君の明治座に出たんだけど、やっぱり彼も時々、ちゃんとした芝居をやるのかな。片手間じゃないんですよ、文化だから。そういう奴集めりゃ絶対集まるよ、まだ。それを見たいっていうお年寄りだけじゃなくて若い子をひっぱってくるようにしなきゃいけないな。

ーー継承していかないといけませんね。それを作り上げる人たちの文化、技術もあるわけですからね。

橋「そうです。ここ30年で変わっちゃったね。僕の結髪の男の子なんて、『八木かつら』っていうんだけど、もう嘆いていますよ。『橋さん、やってくださいよ。京都はもう職人がいなくなっちゃってどうしようもないんですよ』って。かろうじて東映の大河村だけですよ。生きてるのは」

ーー技術が失われてしまいますね。

橋「失われますよ。やるやつがいなくなっちゃう。だから刀の差し方もわからないし、着物の着方もわからないのばっかりじゃ時代劇になんないでしょ、本当は。こういう現実があります。こういうのをなんか、訴えてくださいよ(笑)。特集組んでやったほうがいいくらい、深刻ですね」

ーーもう一つお聞きしたいのですが、今ご活動中のコンサートツアーも2020年にずっと回られるそうですね。

橋「夢グループの石田さんという社長もよくわかってくれていて、やっぱり、どんどん能動的にやらないとダメですね」

ーー2019年6月に成田国際文化会館で開催された時は、会場で『幸せの架け箸』という文字入りの箸入れとお箸も購入しまして、愛用しております。

橋「そうでしたか(笑)。ありがとうございます」

ーーこれは続けられるご予定ですか?

橋「そうですね。主催者の夢グループの石田社長が『ずーっとやってくださいよ』って、『ずーっとって訳にはいかないよ』って冗談言ってるんだけどね(笑)」

ーー年間すごいステージ数ですよね。

橋「そうなんです。石田社長について、一番僕が感心したのは、何で地方に出て行くかって、昼と夜の公演で違う会場で僕らは移動させられるわけです。それは、『お客さんがいるところに行くべきなんだ』っていう論理なんです。『来いっていうんじゃない』っていう。だから当然、我々が行かなきゃなんない(笑)。そうすると、お客さんの出席率がいいわけですよ。おらが村、おらが町に来ているなら観ようや、ってなるわけですよ。20キロも遠いんじゃ『やめとこうや』ってなるってわけですよ。この心理を的確につかんでいる。『だから申し訳ないけど行ってください』って。昼はここ、夜はここ、って、すごいね。全部やられているよ、全国のイベンターは。たちうちできないですもん。

昔は1万円以上でやっていたのを何千円でやってるから。お客さんは嬉しいじゃない、安いし。それで何人も出ているし。それは『行くべーか』ってなるよね。だから満杯になるわけですよ。ああいうヒーローがね、影役者でいてくれる時期ですよね。それも変わっていかなきゃならない。もっと大手の人達が、それこそイベントとしてきちっとやっていかなきゃいけないのに、そこがみんな辞めちゃうからね。だから破天荒な座組をしていかなきゃいけないっていうのと、お客さんを集客することの難しさ、それでみんなまいっちゃうんですよ」

ーーなかなかそれをできる方がいないのですね。

橋「難しいね。でも誰かまた出てくると思うけど。集客率がどうかって、きっとみんな大変ですよ。座組は簡単に作れるんですけど、大衆っていうかねえ、一般の人達も、毎週毎週そんなに色んな人が来たんじゃ行けないねって話になるでしょ。そうするとお客さんの選択能力になるでしょ。だから僕流に言わせると、今、イベントの通販時代になってきたと。通販って各社いっぱい出しているじゃないですか。そっからお客さんが選ぶじゃない。今、ライブもそれになってきている。本格的な争いですよね。だからここで、どう生き残れるか、っていう時代だね。大変ですよ、これからは。だから、そこに私は文句ばっかり言っているようになろうかなと(笑)。それをネタにしてね(笑)」

ーーぜひ番組を作っていただきたいと思います。

橋「番組やりたいね。やっぱり、映像、テレビっていう強さは他にはないですよね」

ーーたくさんの貴重なお話をありがとうございました。





橋幸夫『60周年記念デュエットベスト~星よりひそかに 雨よりやさしく~』


2019年7月3日発売
VICL-65207 / 3,000円+税
[ 収録楽曲 ]
01. いつでも夢を(デュエット:吉永小百合)
02. 若い東京の屋根の下(デュエット:吉永小百合)
03. 若い歌声(デュエット:吉永小百合)
04. そこは青い空だった(デュエット:吉永小百合)
05. 東京音頭(デュエット:三沢あけみ)
06. 蘭太郎街道(デュエット:山中沙南子)
07. 愛のしあわせ(デュエット:吉永小百合)
08. 夢みる港(デュエット:吉永小百合)
09. あの娘は街へ(デュエット:吉永小百合)
10. 東西南北音頭(東京)(デュエット:三沢あけみ)
11. 大名古屋音頭(デュエット:三沢あけみ)
12. 北国の白い花(デュエット:水野洋子)
13. 花笠太鼓(デュエット:古都清乃)
14. お祭り音頭(デュエット:西川峰子)
15. 宇宙博音頭(デュエット:三沢あけみ)
16. 昭和音頭(デュエット:金沢明子)
17. 今夜は離さない(デュエット:安倍里葎子)
18. 男と女(デュエット:安倍里葎子)
19. スターダスト上海(デュエット:ステファニー)
20. 君の手を(デュエット:林よしこ)
21. 今夜は離さない~令和バージョン~(デュエット:保科有里)

関連リンク

◆橋 幸夫 オフィシャルサイト

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