【ライブレポート】デビュー40周年・早瀬ひとみ、銀座TACTで記念ライブ開催

早瀬ひとみ

歌手の早瀬ひとみが、デビュー40周年の締めくくりとなるライブを、12月3日、東京・銀座のライブハウス・銀座TACTで開催した。早瀬は1980年11月22日に「北の岬」でデビュー。演歌、シャンソン、ジャズ、ブルース、歌謡曲など幅広いジャンルを歌いこなす実力派として知られている。この日は、早瀬の活動を振り返るトークを交えながら、5人編成による生演奏(ギター、ベース、キーボード、ドラムス、バイオリン)で、オリジナル曲の他、スタンダードナンバーのカバーの数々を披露した。
 
前半では、妖艶な白いドレス姿で登場した早瀬。オードリー・ヘップバーン風のアップスタイルに気品が感じられる。オープニングナンバーは、2000年代に発売された早瀬のオリジナルから、「京都一人」「誘惑の蒼い瞳」「別離~さよなら~」。これらは作曲家・浜圭介による三部作。早瀬が「浜先生、私で遊んでるんじゃないかしら?(笑)」と言うほど曲調が異なる3曲を見事な歌唱力で歌い上げた。「デビュー40周年感謝申し上げます。20代の頃に歌っていた曲をお届けして良いですか?」という挨拶から、佐瀬寿一作曲、荒木とよひさ作詞の「雨よ降れあの人に」、なかにし礼の意味深な歌詞が光る「スキャンダル」、平尾昌晃が作詞・作曲を手掛けた「あやめの章」と、歌謡界の巨匠達による、早瀬のオリジナル曲に会場の熱気も高まる。

「演歌でデビューして、歳を重ねるとともにシャンソンを取り入れ、女性のお客様が増えました」と早瀬。20代の頃は客席の95%は男性だったが、今は半分以上が女性という話も興味深い。「次に新曲を出すとしたら、『三密の恋』。誰か書いてくれるかしら?」というトークに笑いが起こる。ちあきなおみの「四つのお願い」の替え歌で、コロナ感染対策を促す歌詞の「五つのお願い」を歌う場面では爆笑も起こり、会場な和やかな雰囲気に包まれた。「皆様の笑顔が見たくて、こんなことばかり妄想しています」と笑顔の早瀬。ここからはシャンソンの名曲「再会」「百万本のバラ」「水に流して」を熱唱し、「ブラボー!」「素敵―!」と歓声が贈られる。

早瀬ひとみ

後半は、深いスリットがセクシーな黒いドレス姿で登場した早瀬。「ちょっぴり刺激的な歌から」という紹介の後、スタンダードナンバーのカバー「朝日のあたる家」を歌い始めると、一気に会場中を歌の世界に引き込む。間奏でショールを外して肩を露わにする早瀬のパフォーマンスも格好良い。続けて、美空ひばりの曲から「ひとりぼっち」を歌唱。

「岩手から出てきたのは40年前です」と当時を振り返り、歌手になったきっかけを語るMCでは「歌に目覚めたのは、ちあきなおみさんの『喝采』を聴いた時。“私もあの人みたいになりたい!”と思いました。中学になった頃から、スター誕生!、ホリプロタレントキャラバン、ミスセブンティーンなど、色々なオーディションを受けました。6年間、オーディションを親に内緒で受けており、高校3年生の時の就職試験ではバスガイドさんも受けました。ラスト1回だけ、これでダメなら諦めようと、文化放送さんのオーディション番組『スターは君だ!』を受けに行きました。親には友達の家に泊まってくる、と嘘をついて夜行列車でオーディションを受けに行ったのです」と振り返る。予選と本選を突破し、高校の卒業式の3日前に開催された決戦大会では、岩崎宏美のデビュー曲「二重唱」を歌い、応募総数2万5千人の中から、見事グランドチャンピオンを獲得。その貴重なエピソードの後に「二重唱」を披露するというファンには嬉しい構成である。歌い終えて「おはすー!」(岩手弁で、恥ずかしいの意味)とはにかむ早瀬。続けて、早瀬のデビュー曲「北の岬」、1983年に発売されてヒットした「ちょっと待って大阪」を歌唱。「ちょっと待って大阪」ではイントロから手拍子が起こり、サビの前に「ハイ!」という合の手で客席も一体となって盛り上がる。「今日、都外からいらしている方は?」との早瀬の問いに、「秋田から!」「岩手から!」と次々声が上がる。そのまま、都外から来たファンと早瀬のじゃんけん大会となり、勝者達には「瞳ニンジンジュース」がプレゼントされた。

早瀬ひとみ

ここで、「私事ですけれど」と早瀬。去年の暮の12月26日に父親が亡くなったことを明かした。新型コロナの影響で新盆も1周忌も帰郷できなくなってしまったという早瀬が「弔いの歌を歌わせていただいて良いでしょうか? 皆さんも先に逝かれた大切な方を思い出しながら聴いてください」と語り、ちあきなおみの「冬隣り」、大月みやこの「白い海峡」を披露。「『売れるまで帰ってくるなよ!』と父に言われていて、でも何度も帰っていました(笑)。父は生きている時よりも存在感が増しました」と涙声の早瀬に、涙ぐむファンの姿も見られた。

後編の終盤は、明るいメロディに「♪乾杯しましょ 生きててよかった」という歌詞が印象的な、美空ひばりの「KANPAI」。早瀬の軽快なダンスにも魅了される。最後は、「今まで支えてくださった方々に感謝を込めて」との言葉から、高橋真梨子の「for you」。歌い終えると「ブラボー!」「アンコール!」と次々声が上がる。アンコールは早瀬の2014年のシングル「知ったかぶり」、美空ひばりの「人生一路」をエレキギターが効いたロックなアレンジで歌いきり、喝采が贈られた。早瀬のデビューからの軌跡を知ることができるトークも楽しく、早瀬の歌唱力・表現力の高さを存分に堪能できるライブだった。

取材・文:仲村 瞳

<早瀬ひとみ 銀座TACTライブ>

2020年12月3日(木) @東京・銀座TACT
[ セットリスト ]
前半
01. 京都一人
02. 誘惑の蒼い瞳
03. 別離~さよなら~
04. 雨よ降れあの人に
05. スキャンダル
06. あやめの章
07. 粉雪
08. 再会
09. 百万本のバラ
10. 水に流して
後半
11. 朝日のあたる家
12. ひとりぼっち
13. 二重唱
14. 北の岬
15. ちょっと待って大阪
16. 冬隣り
17. 白い海峡
18. KANPAI
19. for you
20. 知ったかぶり
21. 人生一路

関連リンク

◆早瀬ひとみ オフィシャルサイト