【インタビュー】歌謡殿堂レジェンド〜成功への道〜第三回:扇ひろ子(後編)

【インタビュー】歌謡殿堂レジェンド〜成功への道〜第三回:扇ひろ子(後編)


歌手としての集大成をお見せしたい

ーーそれでは、2000年代の楽曲についてもお聞きしたいと思います。最新シングルが2017年の「おんな流れ花」ですね。

はい。このシングルのディレクターはコロムビアの本多秀さんです。本多さんは、その前の「深川美人」(2015年)が最初でした。「深川美人」は辰巳芸者を題材にした、小粋な小股の切れ上がったお姐さんの、私の今までの姐さんとは違った、花柳界の粋な雰囲気の歌です。とても良い作品をいただいたなと思います。大事に歌わせていただいています。


ーーとても良い曲です。カップリングの「さすらいおんな節」も素敵ですし。

あれもいい! すごく。本多さんが、「おんな流れ花」とは、違う雰囲気で作ってくださったそうです。


ーーそんな感じがします。

「♪時には母のない子のように~」って曲の雰囲気のね。内容は全然違うけど。良い歌で自分には合っているなと。それで「おんな流れ花」に辿り着くんですけど、作詞家の志賀大介先生と三軒茶屋でお会いして、とても年齢より若く見えて日本酒をこよなく愛されて、優しくて。「好きな先生だな」なんて思いました。その時に、「おんな流れ花」を、外国で言えば、フランク・シナトラさんの「マイウェイ」なんだなと、一人の人生を歌った作品ですよということをお聞きして。この詞が、なんか私にぴったりで、自分の身にズンと突き刺さる良い作品だと思いました。

今でも覚えているんですけどね。私が志賀先生にクソ生意気なことを言ったことがあるんです。レコーディングの時、4番目の歌詞に「早い遅いはあるけれど やがて行く道 手酌酒」だったんですよ。で、私は、「手酌酒ねえ……、面白くないなあ」と思ったんですよ。それで、「先生、大変生意気なようなんですけど、ここの部分だけ変えていただけないでしょうか?」って言ったんです。そうしたら先生が、考えられて。パパっと書いて見せてくださって、「“空の果て”ってどうですか?」って。「わあーすごい!」と思って。それこそ鳥肌でしたね。本当に、みんな黄泉の世界に行くっていう。空ですよね。「いやー、すごいなあ!」って思って。そこだけ「生意気なこと言ってすみません」って、いまだに申し訳ないなと思ってる。でもそこでちょっとうるっと来るところですよね。私はね。


ーーその場ですぐ歌詞が出てくるのが流石ですね。

そうです。「やがて行く道 空の果て」なんて出て来ませんよね。「やがて行く道 手酌酒」から。先生は私の気持ちに沿った歌詞を……。やがていつかは空の果てに行くんだという。


ーー深いですね。

深いです! すごく。


ーーそうやって曲を作り上げて行かれるのですね。

だから、この作品はもう、本当にこれからも大事に歌わせていただくし、「深川美人」も、「さすらい女節」もそうなんです。


【インタビュー】歌謡殿堂レジェンド〜成功への道〜第三回:扇ひろ子(後編)


ーーありがとうございます。それでは最後の質問です。ずっとプロの歌手として歌って来られた、その秘訣と思われることは何でしょうか?

途中抜けたり、ハワイに行ったり、何回も挫折しましたよね。何て言うんだろう? 事務所にいて、何か魅力が無くなったっていうか、そういう時代がありましたね。せっかくその事務所で育ったんだけど。何か社員みんなもマンネリみたいで。「よし! 団結してやろう!」っていう「新宿ブルース」の時みたいな、そういう熱気っていうものがだんだん感じられなくなって。ただ、毎日漠然として「おはようございます」ってただ会議やって、今日は営業でどこか行ってって。それが嫌になって、事務所をやめようと思いましたね。やめたら大変だということもわかるんだけど、まずそういうマンネリさから逃げ出したいという、そういう思いを持ったこともありました。

その時にお芝居をちょっとやっていたことがありまして、藤山寛美先生に「自分が応援するから一プロやめなさい」って言われて。その一言でやめたんですけど。まあ、当然バッシングされましたよね。芸能界から追放とか週刊誌で出されたし。これはあえて受けて立たなきゃいけないし。でもそう言っている間に藤山先生も亡くなられたんですよ。そうするともう、やめなきゃしょうがないと思って。まあ、今日までマネージャーと二人三脚でやって参りましたけども。何回も挫折し、「もうだめだな」と思うことはあったけれど。結局、私は歌が好きなんですよね。やっぱりどこかで好きなんでしょうね。それで歌ったことによってお客様が泣いてくださったり、感動を身体が覚えているわけじゃないですか。だから、この道で歌ってこられたと思います。

ただ、自分が75歳になった時に、やっぱり昔の声量もなくなってくるから。あたりまえですよね。「ああ、いつまで歌っていていいのかな?」と考えますね。今年55周年のファイナルがあります。本当は2020年12月21日の予定だったんですけど、コロナで延期しました。一応、4月の26日にさせていただきます。なぜ、4月26日かというと、東京オリンピックの前にやらせていただきたいですし、2021年は56周年なんです。だから、どうしても、よっぽどのことがない限りはそれに向かってやりたいと。自分の集大成ですよね。ファンの人も年を取っているし何人も亡くなられているから。バンド演奏で集大成をお見せしたいと思います。その後、自分がどうするかは考えようかと。例えば小さいところで歌うことができたとしても、大きなところは最後かな、と自分では思っています。


ーー場所が池袋のメトロポリタンホテルでしょうか?

そうです。佐々木新一さん、園まりさん、小松みどりさん、真木洋介さんがゲストで参加してくださる予定です。


ーーそれは豪華ですね!

私は心臓病や胃がんをやって手術もしているから、多少違うんですよね、前と。時々呼吸が苦しくなったり、救急車で2回位運ばれたんですけど、それが無ければ、歌えるかなって。コロナのこともあって、先は決めてはいるんですけど、もやがかかったようですし。だから年賀状にも、「予定させていただいています」と。「決定」とは書けないんですよね。でも、私の最後の集大成で、というのは書いています。


ーー4月26日のステージを楽しみにしております。本日は、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。




<扇ひろ子 歌手生活55周年記念ディナーショー>

日時:4月26日 受付 17:00 / お食事 17:30 / ショータイム 18:15
会場:東京・池袋ホテルメトロポリタン 3階「富士」
出演:扇ひろ子
ゲスト:佐々木新一 / 園まり / 小松みどり / 真木洋介

チケット
料金:20,000円(税・サービス料込)予約制
お食事・着席料理 / お飲み物・フリードリンク

問:オフィス 扇ひろ子 03-3795-7313


関連リンク

◆扇ひろ子 オフィシャルサイト

ただいま、記事の2/2ページ目です。 最初のページに戻る