【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#191 シンガーソングライター・宇多田ヒカルの言葉

仲村瞳の歌謡界偉人名言集

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。


芸術は何かっていうと、抑制だよね。Restraint。

『utadahikaru.jp』(Session3/宇多田ヒカル 小袋成彬 酒井一途 座談会/2017)より

今回の名言は、作詞家の小袋成彬と演出家の酒井一途との鼎談からの抜粋である。「爆発じゃないよね。芸術は」と言う小袋に対して宇多田が発した言葉。宇多田は、「爆発もあるんだけど、ある程度コントロールした環境で起こすものだから。それさえも抑制だと思う、爆発自体が」とも語る。そして、「ヒカルさんにとっての抑制って、何を抑制しているの?」という酒井の鋭い追求に対しては、「簡単に言うと、生存のための抑制」、「感じすぎたら身体に害になるだろうと思うことを、感じなくしちゃう。自分の中で、いつもとは違う部屋の中に見たくないものを置いておく。で、たまにその部屋を開けて、わああってなる。そういうのが私の抑制」と返答。曲作りの過程では、「急に、地獄の蓋が開いたようになって」歌いながら泣き続けることもあるという。精神分析のセッションにも似た、創作のプロセスが詳しく語られた貴重な記事である。このような哲学的な思考が宇多田の歌詞に反映されているように感じられる。
   

宇多田ヒカル(うただひかる)
1983年1月19日生まれ、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。シンガーソングライター、ミュージシャン、音楽プロデューサー。1990年、藤圭子(RA U)、宇多田照實(SKING U)と共に家族3人ユニットU3を結成。1993年、宇多田ヒカルもボーカルとして参加。U3のメンバーとしてアルバム『STAR』でデビュー。1995年、宇多田ヒカルがメインボーカルとなりcubic U名義でインディーズからヨーロッパやアメリカ合衆国で作品を発表。1966年、日本で藤圭子 with cubic Uのメンバーとして日本でシングル「冷たい月 〜泣かないで〜」を発売。1997年、アメリカでCubic U名義でシングル「Close To You」(「遙かなる影」のカバー)をリリース。同年、アルバム『Precious』をリリース。1998年、「宇多田ヒカル」としてのデビューシングル「Automatic/time will tell」をリリース。総売上枚数200万枚を突破し、伝説的楽曲となる。若き天才として注目され、絶大な人気を呼び社会現象と化した。1999年、1stアルバム『First Love』をリリース。売上枚数は、日本国内で約765万枚、海外も含めると約990万枚。2000年、初の全国ツアー『BOHEMIAN SUMMER 〜宇多田ヒカル Circuit Live 2000〜』を開催。同年、コロンビア大学に入学。2001年、アメリカのニュース雑誌『TIME』アメリカ版の増刊号『Music Goes Global』でU2のボノ(Bono)やビョーク(Björk)らと共に表紙を飾る(アジア版では単独)。2004年、日本武道館5日間公演ライブ『Utada Hikaru in BudoKan 2004 「ヒカルの5」』を開催。同年、「Utada」名義で全米デビュー・アルバム『エキソドス』(EXODUS)をリリース。2009年、アルバム『ディス・イズ・ザ・ワン』(This Is The One)を全米配信。日本人アーティストとしては最高位となる。2010年、初の北米ツアー『Utada “In The Flesh” 2010 Tour』を開催。2016年、『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。2021年、アニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のテーマソングとして新曲「One Last Kiss」が起用。同年4月、アニメ『不滅のあなたへ』(NHK Eテレ)の主題歌に新曲「PINK BLOOD」が起用される。



仲村 瞳(なかむらひとみ)
仲村瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。
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