【レポート&インタビュー】浅草に写真スタジオを構えて1世紀! マルベル堂の100周年記念展の記録

〈スペシャルインタビュー〉
6代目店長兼カメラマンの武田仁さんインタビュー

ーーこの度はなぜ、東京タワーで開催されたのですか?

本当は浅草でやるべきだと考えていたのですが、浅草公会堂がリニューアルのため1年使えないと判明しまして……。その時、『東京タワーで会いましょう計画』というキャンペーン企画を知りまして、主催の方から「ギャラリーを使いませんか?」と言っていただきました。東京タワーであれば、昭和の象徴ですし、マルベル堂100周年をやるのに適しているなと思いました。


ーー4月23日に始まって、4月25日から5月15日まで緊急事態宣言のため、休業となったのですね。

はい。4月は2日だけ開けました。その間、マルベル堂の常連の方、Twitterのフォロワーさんも結構いらしてくださったことをとても嬉しく思っています。4月25日からは東京タワーが休業に入ってしまい、記念展も休業せざるを得ない状況でした。


ーー他の場所で記念イベントのご予定はありますか?

現時点では、このように大きくやる予定はありません。ただ、東京タワーで開催予定だった、カメラマンのムトー清次さんと私のトークショーは、どこかでできればと思っています。ムトーさんは高倉健さんをはじめ、日活、東映のスターから色々な方を撮られてきた方で、マルベル堂もお世話になってきました。ムトーさんは現場で色々体験なさっているので、話がめちゃくちゃ面白いんですよ。


ーーそれは是非とも聞きたいです! 配信はされないんですか?

配信できる内容じゃないと思います。それだけ昭和スターのコアなところに入っていた方ですから。渥美清さんとか高倉健さんとかとプライベートでも付き合っていたくらいの方なので、あまり外に出せない話も多くて……。その方とマルベル堂のプロマイドの遍歴みたいなものを交えてできればと思っています。


ーー店長兼カメラマンというのは100年の歴史で初めてなのですか?

そうですね。私は師匠の中村孝カメラマンのアシスタントを6年間しまして、師匠がガンで亡くなったので、その代わりを務められるのは私しかいないという感じでした。お客様に笑顔になっていただけることを第一に考えて、自分の体が空いている時は、できるだけお客様の希望に応えられるよう、休日も返上しています。4月は休みが一日だけ、5月はニ日だけでしたね(笑)。スタッフたちにも支えられています。


ーー武田さんが考案された撮影プランの「マルベル80’s」が人気のようですね。

最近は、20代前半の女性が多く来てくださいます。アイドルやバブル時代の格好、その時代を経験していない子たちが、その時代に憧れを持って楽しみに来てくださいます。2人で2万円なので“その位だったら出せるかな”、という設定にしています。


ーーかなりリーズナブルですよね。

写メもOKだし、撮影が終わってお着替えしている間にプロマイドもできますし、データは全部差し上げますので、そう考えるとリーズナブルですね。写真スタジオは写メがNGのところが多いんですけど、うちのスタジオはノールールなんです。動画を撮っても良いですし……。以前、ご家族の撮影で、その日来られない方がいたんですが、その人に向けてテレビ電話していましたよ。


ーーAmazonでの販売もされているのですよね。

西城秀樹さんのプロマイドが新着ランキングで1位を獲っていました。以前は、Amazonでの販売はしておらず、自社のホームページの販売だけに限定していたのですが、やはりもっと浸透していってもらいたいなというのと、コロナ禍でもあり、通販に力を入れなきゃと色んな事情が折り混ざってやることになりました。あと、転売している方がかなりいるようなので……。できればマルベル堂のオフィシャルで買っていただきたいなというのもあります。


ーープロマイド以外のグッズも充実していますね。

その辺りも当時の公式商品の仕入れのもので、中山美穂のペンケースとか、堀ちえみ、本田美奈子の下敷きとか、色々なものの当時の在庫があります。やはりファンの方に買っていただきたいので、プレミア価格は付けていないんですよ。定価で販売すれば、転売も少しは減って、本当のファンが欲しいものを適正価格で買える。それが我々としては望んでいることなので。


ーースターとファンの間の、ずっと続いている信頼関係のようなものがあるからですよね。

仰る通りで、プロマイドは「スターとファンを身近にするものだ」と師匠からすごく言われました。当時はデジタルじゃないし、(画面上で)大きくしたり保存したりできないんですよ。当然、スターと握手もできない。そうするとファンがスターに近くなるために何があるかっていうとプロマイドなんです。もしくは映画のパンフレットか。そういう時代だったんですよ。「プロマイドはファンのためのものなんだ。だからお前がシャッターを押すと時に、自分の主張や何か入れるんじゃなくて、そのスターのファンだと思って撮るんだぞ」と教わるんです。で、1枚1枚心を込めて、だから今だに連写はしないんです。1回1回ポーズを変える。当時でいうと、スターは時間がないから、マルベル堂のカメラマンは時間をかけちゃいけない。そして一発必中。要するにミスをしちゃいけない。失敗を恐れないといけない。一回押したらその一回がプロマイドにならないとダメなんです。以前、舟木一夫さんの撮影をさせていただきましたが、大変緊張しました。その時はシャッターを押したのが4回だったと思います。


ーー撮影中、他にはどのようなことを意識されるのでしょうか?

バストアップなのは、ファンはスターの顔をよく見たいから。だから影もつけちゃいけない、カメラ目線をもらわなきゃならない、微笑んでもらわなきゃならない。そして、フレームにスターの手も収める。ファンは爪の先まで見たがるんです。指が長いとか親指が沿ってるとか、色んなところを見てる。だから入れてあげるんです。昭和の時代は今と違って写真一枚から色んなことを想像するんです。例えば、郷ひろみさんが受話器を持っているプロマイドがある。それを購入して自分がスターと電話をしている気になれるんですね。


ーーつながっている気になれるんですね。

そうなんですよ。今はなんでも簡単に答えが見つかる。利便性は良くなりましたが、当時は写真一枚でその時はどうだったんだろう、白黒だけどこの衣装はどんな色だったんだろうとか、色々なイメージをしたと思うんです。そういうことを思いながらシャッターを押すんですね。


ーー深いですね。

今はオタク文化って言っていいのかな? アイドルを推しているというのも今は普通ですけど……。当時は、スターに熱を上げるのは“ちょっと恥ずかしい”という気持ちもあったんです。だから、隠すようにしまっておいて、プロマイドを見たときに色々考察というか解釈していたと思うんです。マルベル堂の昔のレジはちょっと横向きになっていて、どのスターのプロマイドを買っているかわからないようになっていました。“人から見られたくない”、という思いもあったんですね。“誰々が好きだ”って言うと“からかわれる”というようなこともあったようですね。


ーー私の母も、学生時代、タイガースでジュリーが一番好きだったのを隠して、他のメンバーが好きなふりをしていたと聞いたことがあります。

隠れキリシタンのようですね。本当、そうですよ。シブがき隊の3人、少年隊の3人誰が好きかっていうのを自分の中で押し殺して友達に合わせるとかそういうのはあったはずです。隠れて本の間に入れていて、それを見た時にスターと目が合って「うわっ!」となれるのがプロマイドなんですね。


ーーコンビニでのプリントサービスもあるのですね。

まだ、うまく軌道に乗っていませんが……。供給ツールを増やしていきながら、誰でもプロマイドが手に取れるような状況にしてありますが、でもあまりプロモーションしないものですから……。でも昔はすごいプロモーションをしていたんですよ。昭和40年代位かな。ヘリでチラシを撒いたり。あと空気缶っていって、富士山の空気を缶に入れて売っていたんです。『幽霊缶』というのもありました(笑)。本当かよと思いますよ。どこまでが本当かわからないんです(笑)。


ーー浅草ならではのエピソードを教えてください。

浅草はスターの方々がお仕事で来られる機会も多いです。ですので、マルベル堂にふらりと立ち寄ってくださることもよくあります。フォーリーブスのおりもさんやずうとるびの江藤博利さん、つちやかおりさんもいらしてくださいました。急に来られるので心の準備ができないのですが(笑)。嬉しいことですね。



プロマイドのマルベル堂

年中無休
営業時間:平日 11:00〜16:00 / 土日祝 10:30〜17:00
住所:東京都台東区浅草1-30-6
浅草駅銀座線6番出口から徒歩5分
電話/FAX:03-3844-1445
メールアドレス:sinnaka@marubell.co.jp


関連リンク

◆マルベル堂100周年記念展 特設サイト
◆「東京タワーで、あいましょう。」計画展オフィシャルサイト
◆マルベル堂 通販サイト「昭和スター倶楽部」
◆マルベル堂 Amazonショップ
◆マルベル堂 コンビニプリントサービス「e-プロマイド」
◆マルベル堂 オフィシャルTwitter
◆マルベル堂 オフィシャルサイト

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