【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#209 音楽プロデューサー・酒井政利の言葉

仲村瞳の歌謡界偉人名言集


作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。


誰でも、ものごとに感激していくことによって、自分に磨きをかけていく

『不可解な天使(スター)たち 秘められた魔性と私性』(著・酒井政利/廣済堂/1985年5月10日発行)より

日本の歌謡界に大きな足跡を遺し、2021年7月16日に惜しくも死去した偉大な音楽プロデューサー・酒井政利。この本が出版された頃、おニャン子クラブが一世を風靡し、次世代のアイドルプロデュースの担い手として秋元康が脚光を浴び始めていた。そんな中、酒井は“アイドルとは何か? スターとは何か?”を世に問うように書き示している。酒井は、「これは将来大スターになるという見極めは、最低七年はかかると思っている。その点、最近の一発屋の横行は悲しむべき状況だ」と当時の歌謡界を嘆いている。確かに、この頃からきらびやかな歌謡界やスターという言葉の印象が変貌していったように感じられる。今回の名言は、スターになるための条件について書かれた章からの抜粋。特に重要なのは「感激屋」であることだという。しかし、それはスターに限らず、“誰でも当てはまる”と酒井。「いやなことに腹を立てるのも感激の一種だし、本や映画を見て興奮するのもいいだろう。そうやって、日々、自分の細胞を活性化していくのがいい」と説いている。人生を豊かにするための方法として覚えておきたい。 


酒井政利(さかいまさとし)
1935年11月17日生まれ、和歌山県出身。音楽プロデューサー、メディアプロデューサー、心理カウンセラー。酒井プロデュースオフィス代表取締役社長。日本ストリートダンス協会非常勤理事。1961年、日本コロムビアに入社。島倉千代子、こまどり姉妹などを担当しプロデュースしている。1968年、CBS・ソニー(現ソニーレコード)に移籍。数多くのミュージシャンを発掘、育成に尽力し、フォーリーブス、南沙織、山口百恵、郷ひろみ、天地真理、浅田美代子、キャンディーズ、太田裕美、宮沢りえなどのプロデュースを手掛け、次々とスターを生み出していった。1996年、酒井プロデュースオフィスを設立。オフィスの立ち上げにあたり、カウンセラー養成所に2年間通ったという。この頃からテレビ番組などのコメンテーターとしてもお茶の間で馴染みの顔となり、映画や舞台、テレビ番組などのメディアプロデュースなど多くの分野で活躍している。一方で、講演や心理カウンセラーとしての活動も行っていた。2005年に音楽業界初の『文化庁長官表彰』を受賞。2019年に『2018年度和歌山県文化功労賞』を受賞。2020年に『文化功労者』として顕彰されている。プロデューサーとして担当した芸能人の売上累計は約8700億円とも言われ、日本の歌謡界に遺したその功績は計り知れない。2021年7月16日に心不全のため死去。享年85。



仲村 瞳(なかむらひとみ)
仲村瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。
◆昭和歌謡文化継承委員会 Twitter
◆偉人達の借金名言集 Twitter