【ライブレポート】鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>


2021年12月6日、栃木県・船村徹記念館の日光街道ニコニコ本陣ニコニコホールにて、<~船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼 日光#4>が開催された。

演歌巡礼とは、日本を代表する作曲家・船村徹がライフワークとして、1978年から始めた活動で、刑務所慰問をはじめ、全国各地を回りながらギターを弾き歌い、多くの人の心を癒やし続けてきた。タイトルは違うが、2017年に船村が84歳で亡くなった年の6月12日に「船村徹を歌い継ぐ」として内弟子五人会の最年長・鳥羽一郎が継ぎ、おとうと弟子とともに活動をスタート。翌年から「演歌巡礼」と銘打っている。日光#4は2017年からトータルしての回数。

今回の<~船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼 日光#4>は、当初、今年6月の開催が予定されていたものの、新型コロナウイルス感染拡大により2度の延期を経て、前回から2年半ぶりの開催となった。生バンドを入れて、一日で第一部と第二部の2回公演。ここでは、第二部の模様をレポートする。

会場に入ると、BGMにアコースティックギターによる船村メロディ「兄弟船」「紅とんぼ」などが流れており、開演前の気持ちが盛り上がってくる。幕が上がると鳥羽一郎を中心に、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾による内弟子五人会が堂々と並び、船村が作曲した鳥羽一郎の「祭り唄」(1985年)を全員で歌唱。ワンコーラスを歌って間奏で拍手を受ける五人の笑顔が特に輝き、コンサートの開催と人々との再会を喜んでいるようにも感じられた。同曲の作詞を手掛けたのは、作詞家の木下龍太郎。船村と同じく栃木県塩谷郡出身である。今年の4月5日、日光市長在職中に亡くなった大島一生の追悼の意味も込め、日光にちなんだ曲「祭り唄」が1曲目に選ばれたという。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

「どうも、みなさん、こんにちは。鳥羽一郎です」という挨拶の後、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾も挨拶。鳥羽が「今日はもう2年半ぶりに皆さんとお会いできました。世界中が大変で、早くお会いしたかったんですが、今になってしまいました。今日は長くなってもいいから、歌わせてもらおうよ」と客席に語りかけると、大きな拍手が起こった。

船村徹の作曲作品から、まずは「私からいきます」と、鳥羽のデビュー曲にしてミリオンヒット曲の「兄弟船」(1982年)。ステージ右側には、船村が微笑んでいる写真のパネルが置かれ、イントロで鳥羽がパネルに手を当てて船村をじっと見つめる表情が印象的だった。圧倒的な迫力のある歌声で会場中を歌の世界へと誘った。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

鳥羽一郎



続いて、ちあきなおみの「さだめ川」(1975年に)を天草二郎が、北島三郎の「なみだ船」(1962年)を静太郎が、大月みやこの「女の港」(1983年)を村木弾が、走裕介は自身の楽曲「居酒屋『津軽』」(2018年)を歌唱。歌の前や後に船村のパネルに会釈をする姿からも内弟子五人会の船村への想いが伝わってくる。船村門下出身で「船村徹同門会」名誉相談役を務める北島三郎の「ギター船」(1962年)を鳥羽一郎が、松原のぶえのデビュー曲であり出世作「おんなの出船」を静太郎が、村田英雄最大のヒット曲「王将」(1961年)を天草二郎が、コロムビア・ローズの「どうせ拾った恋だもの」(1956年)を村木弾が、「NHK紅白歌合戦」で今までに7回歌われている北島三郎の代表曲「風雪ながれ旅」(1980年)を走裕介がそれぞれ熱唱。たたみかけるような名曲の連続に会場中が沸く。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

村木弾




鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

走裕介



ここで、5人の最新曲のコーナーとなり、まずは村木弾が登場。船村の最後の内弟子である村木は、12年半の内弟子時代を経て2016年にデビュー。2022年1月12日発売予定の「友情の星」が7枚目のシングルとなる。同曲は、作詞がいではく、作曲が船村の長男・蔦将包で、船村と船村の盟友の作詞家・高野公男との友情について描かれている。走裕介は2022年1月26日に発売予定の「恋懺悔」を紹介。作詞が冬弓ちひろ、作曲が幸斉たけしの、ロック調で走の新境地ともいえるような作品である。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

天草二郎



天草二郎は、「僕自身もしばらく歌ってませんで、有観客で歌わせていただけることに感激しております」と喜びを表し、「船村先生が生前、天草にと遺してくださった遺作です。作詞は中山大三郎先生で、昭和の良き頃の情景が浮かんでくる作品です」という話の後「天草情歌」(2018年)を披露。静太郎が、「前作から親不孝息子の歌が続いております。真面目に生きて来たのに……」と語ると会場から笑いが起こる。「胸に手を当てると、ああそうだったな、と思うことも歌詞に出てまいります」という話から、作詞が喜多條忠、作曲が蔦将包の「おふくろえれじい」(2018年)を歌唱。鳥羽一郎は、2022年1月12日に発売予定の、「一本道の唄」について紹介。同曲は鳥羽の40周年記念作品で、作詞が武田鉄矢で作曲は鳥羽の長男・木村竜蔵。鳥羽は歌詞について「俺の『マイウェイ』だと思ったし、武田さんの『マイウェイ』でもあると思った」と語り、思いを込めて歌い上げた。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

静太郎



ここで15分の換気タイムとなり、会場のドアが開かれた。その間、ステージに内弟子五人の会全員が登場。抽選プレゼントタイムが設けられ、なんと船村の妻・福田佳子の手編みのセーターが二名にプレゼントされるという。福田もステージに上がり「本日はいらしていただいてとっても嬉しいです」笑顔を見せた。セーターはカラフルなパッチワークなどが施された凝ったデザイン。唯一無二のスペシャルなプレゼントにどよめきが起こる。アットホームな雰囲気もこの公演ならでは。第一部と第二部で各二名にプレゼントされたそうで、計四名分のセーターを準備していたということにも驚かされる。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

後編で、バンドメンバーが入場。“仲間たちバンド”は、「演歌巡礼」を、30年以上にわたり船村の最期の舞台まで支えてきた、かけがえのない仲間たち。今もどんなことがあっても駆けつけてくれるピアノの蔦将包、ギターの斉藤功が率いる名プレイヤー達で、ピアノとギターに、ベース、バイオリン、アコーディオン、バラライカという編成。このバンドの生演奏が聴けるというのも大変貴重で贅沢な機会である。

後編も、船村作品の名曲が続く。一曲目は、1955年に春日八郎が歌い、船村の出世作となった曲「別れの一本杉」を静太郎が歌唱。同曲の作詞は船村の盟友・高野公男である。「よかったら心の中で歌ってやってください」と鳥羽。三橋美智也の「ご機嫌さんよ達者かね」(1955年)を歌った後の天草二郎に、鳥羽が「栃木なまりの部分が上手く歌えている」と褒める場面も。船村の歌は時おり栃木弁が入るそうで、鳥羽によると、この曲のポイントは《♪ご機嫌さんよー》《♪母のたよりの》の部分だという。しばしの栃木弁講座に、会場は和やかな笑いに包まれた。美空ひばりの「みだれ髪」(1987年)を走裕介が説得力のある歌唱力で聴かせ、会場の熱気はさらに高まる。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

曲の合間に鳥羽のトークが入るのも楽しい。「先生は北海道の稚内が好きだった」と、船村との時間を振り返る鳥羽。昔、船村がサハリンに仕事で行く際、船で付いて行くことができなくなり、船村から「お前はここで待っていろ」と言われた鳥羽は、1週間、稚内の居酒屋「えぞ番屋」で皿洗いのアルバイトをしたという。「今もお店は営業していてお付き合いも続いているんですが、今年の6月にマスターが亡くなってしまいました。すごく寂しいです。色々なことを思い出しながら歌ってみます」という話から、自身の「稚内ブルース」(1988年)を披露。

船村と縁の深い舟木一夫の曲からは、同名の日活映画の主題歌として作られた「夕笛」(1967年)を走裕介と村木弾が、大下八郎の「おんなの宿」(1964年)を村木弾が、青木光一「柿の木坂の家」(1957年)を鳥羽一郎が歌唱した。当時の歌手(北島三郎、大下八郎など)は船村のレッスンを受けていたという話題になり、「俺たちはしてもらわなかった」という鳥羽の言葉に、おとうと弟子全員が頷く。「今になって、流石だなと思う。『俺のところに来たら人間修行だ』と。歌じゃない。そのことが先生、やっとわかったよ」と鳥羽。

そして、「うちの先生の歌は不思議です。すぐには売れないでじわっーと効いてくるんだね」と語る。「矢切の渡し」は、元々、ちあきなおみの「酒場川」(1976年)のB面として発売されており、1982年に梅沢富美男が舞踊演目に使ったことで火が付いたという。翌1983年には細川たかしが歌い大ヒットし、「第25回日本レコード大賞」を受賞。長く愛され続ける「矢切の渡し」の世界を、天草二郎が見事に表現した。



鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介、村木弾が生ステージで熱唱<船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼コンサート>

終盤は、「やっぱり最後にこの歌を聴いてほしい。先生が一番大切にしていた歌だと思います。高野公男先生との友情が歌になりました」という鳥羽の言葉から、船村が歌った「男の友情」(1995年)を静太郎が歌唱。 出演者全員が揃うと、鳥羽が「先生の葬儀の際、弟子達が棺を持ってこの歌で送りました」と振り返り、鳥羽一郎の「師匠(おやじ)」(1991年・デビュー10周年記念曲)を全員で歌い上げた。《♪子でも孫でもない他人の子を 火の粉背おって育ててくれた》という星野哲郎の歌詞が沁みる曲で会場中の一体感が高まったまま、約2時間の公演は終演を迎えた。「今日は変異株も出て、大変な状況の中、足をお運びいただき、本当にありがとうございました」という鳥羽の挨拶の後、全員が手を振り、大きな拍手が響く中、大盛況のうちに幕は閉じた。

日本のこころのうたミュージアム船村徹記念館の加藤加代子館長は「内弟子の皆さんも本日を大変心待ちにしておられました。お客様も演者さんもスタッフも、皆さんまるで久しぶりに旧友に会ったかのような一日でした」と喜びの表情で語る。船村メロディの魅力を堪能でき、船村の偉大な足跡と生のステージの素晴らしさも改めて感じられた演歌巡礼コンサートだった。

取材・文:仲村 瞳


<~船村徹を歌い継ぐ~演歌巡礼 日光#4>

2021年12月6日(月) @栃木・日光街道ニコニコ本陣 
[ セットリスト ]
01「祭り唄」出演者全員
02「兄弟船」鳥羽一郎
03「さだめ川」天草二郎
04「なみだ船」静太郎
05「女の港」村木弾
06「居酒屋津軽」走裕介
07「ギター船」鳥羽一郎
08「おんなの出船」静太郎
09「王将」天草二郎
10「どうせ拾った恋だもの」村木弾
11「風雪ながれ旅」走裕介
12「友情の星」村木弾
13「恋懺悔」走裕介
14「天草情歌」天草二郎
15「おふくろえれじい」静太郎
16「一本道の唄」鳥羽一郎
17「別れの一本杉」静太郎
18「ご機嫌さんよ達者かね」天草二郎
19「みだれ髪」走裕介
20「稚内ブルース」鳥羽一郎
21「夕笛」走裕介、村木弾
22「おんなの宿」村木弾
23「柿の木坂の家」鳥羽一郎
24「矢切の渡し」天草二郎
25「男の友情」静太郎
26「師匠(おやじ)」出演者全員


関連リンク

◆日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館 オフィシャルサイト
◆船村徹同門会 オフィシャルサイト