坂本冬美が歌謡浪曲アルバム発売、師匠である二葉百合子との出会いから20年の集大成

坂本冬美


坂本冬美が、コンサートで長く歌ってきた歌謡浪曲4作品を1枚に収録した歌謡浪曲集大成のアルバム『坂本冬美 歌謡浪曲名作選』を11月9日に発売する。

デビュー36年目に入り、シングル『酔中花』が好調で、現在は明治座で座長公演を連日熱演している坂本冬美。

坂本冬美は、人気歌手として走り続ける日々に疲れ果て、デビュー15周年を迎えた2002年3月に休業を宣言。歌に自信をなくし「このまま引退してもいい」という気持ちで、和歌山県の実家で過ごしていた。当時、突然の活動休止に重病説や死亡説なども出た。休業中、脳裏をよぎった引退の2文字を払拭してくれたのが、二葉百合子の歌謡浪曲「岸壁の母」だった。「導かれたんだ、と思っています」。デビューから15年を経て出会った二葉百合子との縁を、坂本冬美はそう表現する。

「台所にいたら、部屋でテレビを見ていた母から声をかけられた。『二葉百合子さんのコンサートをやっているよ、あなた見たら?』って」。言われるままにテレビの前に行くと、二葉先生の力強い歌声が流れてきた。「一瞬で吸い込まれた。私がすがれるのは先生だけ。強いノドと、強い精神力があったらもう一度歌えるかもしれない。」と思い、先生に手紙を書いた。

歌のレッスンを快諾した二葉先生から掛けられた言葉は、「あなたも歌の壁にぶつかったのね。それは成長の証よ」。それからは、毎日習った。自信と歌声を取り戻し、翌03年4月に復帰。再び歌の道を歩き始めた。



坂本冬美

第二部「坂本冬美オンステージ2022 艶歌の桜道 スペシャルゲスト中村雅俊」坂本冬美2(撮影:田中聖太郎)



「岸壁の母」オリジナルは菊池章子の歌唱で、昭和29年(1954年)9月に発売され大ヒットした。昭和47年(1972年)に二葉百合子がカバーした歌謡浪曲「岸壁の母」が再び大ヒット。以来、「岸壁の母」は二葉百合子の代表曲となった。二葉百合子は「この歌を平和への祈りの歌、二度と戦争は起こしてはいけないという心でいつまでも歌い継ぎたい」と語っている。多くの歌手がこの歌を唄い、レコーディングも行っている。坂本冬美も二葉百合子直伝の「岸壁の母(歌謡節入り)」を唄い、2005年発売のアルバム『浮世草紙』に収録している。

二葉百合子は2008年に引退した。その際、自分自身が歌ってきた歌謡浪曲を弟子たちに歌い継いでもらいたいと願った。「岸壁の母」に指名したのが坂本冬美である。二葉百合子自身が浪曲作曲したロングバージョン「岸壁の母~歌謡浪曲~」(2012年「リクエストベスト桜」に収録、その後2018年にボーカル新録)を坂本冬美に歌い継いでもらいたいと願ったのである。「上手く歌わなくていい! でも、あなたはきっと心でこの歌を唄い継いでくれる。私はそれを信じています!」という二葉百合子の言葉に坂本冬美は歌い継いでいく覚悟を決めた。

今回リリースされる『坂本冬美 歌謡浪曲名作選』には、師匠である二葉百合子の歌唱監修のもとに「岸壁の母」を含むスケール感あふれる4曲が収録されている。



坂本冬美

第一部「いくじなし」左から坂本冬美、中村雅俊(撮影:田中亜紀)



【坂本冬美 コメント】
休業中、運命の出逢いとなったのが二葉百合子先生。
二葉先生が長年大切に歌って来られた「歌謡浪曲」を直々にご指導頂き、復帰後のステージから私なりに二葉先生のお心を受け継いで歌わせて頂いております。
先生にご指導いただいた、この20年の集大成とも言える4曲に魂を込めて歌わせて頂きました。
改めまして二葉先生に心より深く感謝申し上げます。


なお、坂本冬美は現在、明治座にて10月18日まで『坂本冬美特別公演 中村雅俊特別出演』を連日、熱演しており、好評を博している。

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