武部聡志のプレミアムコンサートWOWOWで放送、平井堅、一青窈、松任谷由実ら出演

武部聡志

WOWOWが3月26日(日)に豪華アーティストが出演した一夜限りのプレミアムコンサート「武部聡志 Original Award Show ~Happy 60~」を放送する。

武部聡志

1983年から続く松任谷由実のコンサートツアーの音楽監督をはじめ、一青窈、平井堅、JUJUなど、さまざまなアーティストのプロデュースや編曲、音楽番組の音楽監督、ドラマのサウンドトラックやスタジオジブリ作品「コクリコ坂から」の音楽制作など、活躍は多岐にわたっている。

番組は、その偉大な才能が還暦を迎えたのを記念して、武部にゆかりのある音楽プロデューサーやアーティストが一堂に会し、彼の功績をアワード形式でお届けする、一夜限りのプレミアムコンサート。この音楽の饗宴には、日本の音楽史上に永遠に生き続ける名曲の数々はもちろん、武部がこれから仕掛けたいと考えているチャレンジもすべて詰まっている。

武部聡志

【武部聡志インタビュー】
武部:最初はあまり大げさにしたくなかったんですが、WOWOWさんのご好意でお声がけしていただきまして、今回のライブを開催することになりました。僕は20歳からこの仕事をしていますので、もう40年になります。その間に出会えた人たちは僕にとって“宝物”ですから、そういう人たちに音楽でお祝いしていただけるというのは、ミュージシャン冥利、プロデューサー冥利に尽きますね。

── 総合演出を担当するのは松任谷正隆。1983年から松任谷由実のコンサートの音楽監督を務める武部にとって、付き合いが長く、縁も深い人物である。

武部:最初にかまやつひろしさんのバックバンドの一員としてこの仕事が始まりました。かまやつさんと知り合わなかったらユーミンとも知り合わなかったかもしれないし、ユーミンと知り合わなかったら、また別の誰かと知り合えなかったかもしれない。いろんな人たちの出会いが数多くあった中で、僕の音楽人生の中で一番のキーパーソンとなっているのが松任谷正隆さんです。僕は3歳からピアノを始めて、小学校3年の時にギターを手にして弾いたりしていました。その当時は、グループサウンズやザ・ビートルズに憧れ、そして中学からはどっぷりロックにハマり、アマチュアバンドを組んだりもしていました。
ですが、高校の時にユーミンの音楽と出会い、大きな衝撃を受けたのです。

日本ではフォークやニューミュージックが流行っていましたが、声高らかに反戦を歌ったりする音楽が好きじゃなくて、もっとスタイリッシュなものに憧れていました。そんな時にハマったのがサディスティック・ミカ・バンドとユーミンだったんです。ユーミンが生み出してきた音楽は、アカデミックで、僕が好んで聴いていたイギリスのロックなどのバックボーンもユーミンの歌から感じました。そんなユーミンのレコードのクレジットに“松任谷正隆”という編曲者名を見付け、編曲者が何をする人なのか分かっていませんでしたが、僕の好きなサウンドを作っているのはきっとこの人何だろうなって思って、自分も編曲家になりたいと思いました。その後、この仕事を始めて、縁あって松任谷さんとユーミンに出会い、1983年からずっとコンサートの音楽監督を担当させてもらっています。

実は1985年に結婚式の仲人もしていただきました。それから30数年経って、今度はお二人に還暦を祝ってもらえるというのは感無量ですね。音楽について、松任谷夫妻から学んだことはたくさんあります。お二人がクリエイティブにおいて最前線にいられるのは、自分の意思を曲げず、自分が思ったことをちゃんとやってきているからなのです。それって意外と難しいことだと思うんですね。流行っている音楽というのはどうしても気になります。

でも、自分がやりたい音楽や自分の頭の中でなっている音楽を形にすること、追求する姿勢が音楽家にとって一番大切で、忘れてはいけないことなんです。それを身をもって教えてくれました。ずっと松任谷さんの演出を見てきましたので、今回、自分のショーを開催するにあたって、演出を任せられるのは松任谷さん以外考えられないと思い、お願いしました。快諾していただいて嬉しく思っております。

── 出演者は、ゴスペラーズ、平井堅、一青窈、JUJU、久保田利伸、松任谷由実、miwa、大黒摩季、斉藤由貴、さかいゆう、スガ シカオ、手嶌葵といった個性的かつ実力派のアーティストたち。

武部:ユーミンに関しては、先ほどお話しした通り、私の音楽人生に欠かせない方ですから是非とも出演していただきたいと思っていました。他に出演していただいたアーティストの皆さんも音楽性は違っても、音楽に取り組む気持ちとか、同じ志を持った人たちですし、出演するアーティスト同士、リスペクトし合ってると思うんです。ユーミンをリスペクトする久保田君がいたり、久保田君をリスペクトする平井君がいたり、お互い音楽家として認め合ってる人が集まりました。

── どの出演アーティストも武部聡志との関わりが深く、武部自身もミュージシャンとしてリスペクトしている人ばかりだ。

武部:久保田君とは彼がデビューする一年ぐらい前に行われた全国のディーラーに向けてのコンベンションなども一緒に回りました。当時から歌が超絶上手くて、いい時期悪い時期を経て、今本当に素晴らしい歌を歌えるアーティストになりました。そんな彼とまた一緒に音楽ができるというのは素敵なことですね。平井堅君もデビューの頃から一緒に制作をしてきましたし、それ以後も節目節目に声をかけてくれたり、僕が音楽監督をやっているテレビ番組にも多く出てもらったりしています。平井君は歌うことに対してものすごく真摯でストイックな人なんですよ。そのプロ意識の高さは感心するというか、脱帽といった感じですね。それは彼がデビューしてすぐにブレイクしたアーティストではなかったからだと思うんです。“なんで僕の歌が届かないんだろう”と悩んだ時もあったと思いますが、その中で自分のボーカルスタイルを確立していったんではないでしょう。最初から歌は素晴らしかったんですが、いろんな経験をして、深みや味わいも増してきたように感じます。そして、一青窈。僕は、自分の音楽性を投影できる松任谷夫妻の関係を羨ましいと思いながら見ていました。 1990年代の終わりに一青と出会った時、僕の音楽性を投影できるパートナーが見つかったような気がしたんです。音楽性だけじゃなく、生き方や価値観を共有できる感覚を持っているなって。「もらい泣き」をはじめ、最初のアルバムを一緒に作った時は毎日ファックスで何十枚も歌詞を送ってきました。それだけ自分の発したい言葉やメッセージがある方なのです。「ハナミズキ」は9.11のテロ事件を受けて、友達の想いを組んで彼女が作った曲で、僕はアレンジャーとプロデューサーとして、その歌が一番届くにはどうしたらいいのかを考えただけ。歌詞も何も直すところはありませんでした。この歌は“反戦歌”なんですが、声高らかに「戦争反対!」と叫ぶのではなく、“君と君の好きな人が100年続きますように”と、みんながそういう想いを持てば争いは起こらない、と。その価値観、表現方法がすごく共有できる部分です。「もらい泣き」は僕も作曲に関わっている記念すべきデビュー曲ですし、僕が唯一日本レコード大賞の編曲賞をもらった曲になります。

── 今回のライブは“アワード”スタイルということで、亀田誠治、寺岡呼人、映画監督の宮崎吾朗などがプレゼンターとして登壇する。

武部:グラミー賞みたいなアワード形式のライブを意識した構成にしようという松任谷さんのアイデアもあって、プレゼンターの方が登場するアーティストを紹介してショーが進んでいくというスタイルにしました。プレゼンターの方々が、僕に対してだけでなく、そのアーティストについてもコメントしてくれますので、“なぜこの人がこの楽曲を歌うのか”など、必然性や関係性も分かるショーになります。

── 日本でもフェスなどのイベントが増え、定着した感があるが、ミュージシャンたちが集まるというだけではなく、人と人との繋がり、関係性が見えるイベントというのはまだそれほど多くはないように思える。そういう意味でも、今回のライブは時代やジャンルといった枠を超えた特別なショー。

武部:僕は子どもの頃から、歌謡曲もロックも同じように好きでした。クラシックもジャズもそうですけど、音楽はジャンルとかは関係なく、もっと自由であるべきだと思うんです。メディアが変わって音楽の伝わり方が変わっていく中でも、音楽が持っている本質的な力はかなりアナログなものなんです。いくら人工知能が発達しようが、音楽家がちゃんと想いを込めて作る音楽には勝てないし、それは機械が絶対に生み出せない。僕なんかもライブを見たり、音楽を聴く時はついつい分析してしまいがちなのですが、このショーを観る人はみんな子どもの頃のように“音楽を楽しむ”という原点に立ち戻っていただいたいですね。ただ、僕としてはノスタルジックにキャリアを振り返るショーにはしたくないんです。出演するアーティストが過去の僕の作品を歌ってくれる場合でも、今の解釈で歌ってくれるでしょうし、そこに変わらない何かがあるということも伝えてくれると思っています。1980年代や1990年代の楽曲でも今の時代にも十分に人に伝わって、人を感動させられる。そういうものを作ってきたんだということを証明できるショーになったかと思います。

WOWOWライブ「武部聡志 Original Award Show ~Happy 60~」

3月26日(日)夜6:00 放送
収録日:2017年2月27日 
収録場所:東京 東京国際フォーラム ホールA
<出演者>(アルファベット順)
ゴスペラーズ、平井堅、一青窈、JUJU、kōkua、久保田利伸、松任谷由実、miwa、大黒摩季、斉藤由貴、さかいゆう、スガ シカオ、手嶌葵、武部聡志
<バンドメンバー>
Kbd.本間昭光、Kbd.宗本康兵、Gt.鳥山雄司、Gt.佐藤大剛、Dr.河村“カースケ”智康、Dr.村石雅行、Perc.坂井“Lambsy”秀彰、Ba.松原秀樹、Cho.加藤いづみ、松岡奈穂美、今井マサキ、須藤美恵子 and more
<音楽監督>
本間昭光
<プレゼンター>
亀田誠治、寺岡呼人、宮崎吾朗 and more
<総合演出>
松任谷正隆

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