コラム【伊藤美裕の歌謡遊泳】ザ・ビューティフル平山みきさん

2017年3月31日イチオシ, 歌謡情報

コラム【伊藤美裕の歌謡遊泳】

2011年にデビューして以来、私は少なくない数の歌手のみなさんと共にステージに上ってきた。番組など、ステージ以外でも色んな方とお会いする機会は多い。けれど、基本的に私は大勢でわいわいやるのはあまり向いていないみたいだし、あまりプライベートで華々しい交友関係があるというわけではない。

ただ何人かとは深い親交があって、そのうちのおひとりが、平山みきさん。私がレギュラーで出演していたラジオ番組にゲストとして来てくださったことがきっかけで、レーベルが同じということで距離が縮まり、以後長いお付き合いをさせてもらっている。

「昔の私を見ているみたい」と出会った当時、みきさんからよく言われた。真面目なところが似ているそうで、これまでに数多く楽しいことをご一緒してきた。ブライアン・セッツァーのライヴに連れて行ってもらったのを皮切りに、みきさんが京都から東京にいらしたときはお食事をしたり、お互いの主催イベントを行き来したり。お洒落なお洋服をふくろいっぱいに譲ってくださったこともあった。“DIKANYAMA MIRACLE CABARET”と名をつけ、グループで活動をしてもいるし、なにより素敵な音楽をたくさん教えてもらった。「フレンチ・ポップとか合うんじゃないですか」(みきさんは誰に対しても半分くらいは丁寧語なのだ)と言ってもらったりして、うれしかったのを覚えている。

そう、みきさんは楽しいことがお好き。やりたいと思ったら、いる場所を変えてでもやってみる、というスタンスは変わらない。毎年京都でクリスマスのイベントを主催したり、やりたいことに正直に、エネルギッシュに生きているお姿に感銘さえ受ける。以前、パリのJAPAN EXPOに出ましょうよと言っていたけれど、みきさんのそういう発想が私はとても好き。

そしてみきさんは親切・丁寧（なんだか宣伝文句みたいですが）。ご本人は「歌のイメージとは違って、普通なんです。遊んだりしなかったし」と自分自身をいつも説明するのだけれど、たしかにそうだし、そうでないともいえる。ステージだけでなく街の中でもレストランでも、黄色いお洋服でみんなが振り返っても超然としているみきさんは、あまりにみきさんらしくって私は好きだし、一方でお子さんの話をすると照れたりしているのを目にすると、可愛い人だなぁと思ってしまう。

同じ歌手という視点でみきさんのことを少しお話するなら、（私が言うまでもないことなのだけれど）あの独特な声の存在感はちょっと他にないんじゃないかという気がする。どんな曲も声を発した瞬間、みきさんの色に染まる（近くで聴いていると一層、それはすごいことだと実感する）。それから、一聴する限りでは重そうな声なのにドライブ感があって、作曲家・筒美京平さんの秘蔵っ子と言われ、大切にされたというのも改めて納得がいく。そんなみきさんの最新のアルバムには訳あって私の声が入っているのだけれど、形になったCDを聴いたとき、それは感慨深いものがありました。みきさんの音楽に入り込むしあわせ。機会があれば、ぜひ聴いてみてください。

最近は歌手としてだけでなく、女性として、人生の先輩として深くお話を聞いたりして、そこから考えさせられることも多い。長電話もたまにあるんだけれど、「じゃあね」と少し語尾が上がり微笑むような別れのことばに、私は今、平山みきさんの声を独り占めしている、と毎回ふと小さな感動がある。電話をきって、次はいつ会えるかしら。その時をこっそり心待ちにしていることはみきさんには秘密です。