コラム【伊藤美裕の歌謡遊泳】安井かずみという生き方

コラム【伊藤美裕の歌謡遊泳】

作詞家の生き方というのはとても興味深い。1960年代、まだ男社会だった日本で、バリバリ活躍していた女流作詞家・安井かずみさん。奔放な性格で顔も広く、たとえばアダモなどといった海外セレブと交流があり、華麗な生活をしていた彼女は常に世の中の先を行っていて、日本の女性の憧れの的だった。

私は数年前、ZUZU(安井さんの愛称。敬意を持ってこう呼ばせてください)の一生を、作詞楽曲を散りばめシネマ仕立てのカヴァーライヴをやったことがあるけれど、再び向き合ったのは『30歳で生まれ変わる本』という彼女の著書にたまたま出逢ったことがきっかけ。加えてZUZUの他の本をプレゼントされたこともあって、巡り合わせなのかしらと思ったのです。

普段歌詞を書く人なので、彼女の文章は1文1文歯切れ良くて潔い。その勢いで、たくさんの著書の中で女の生き方について説いている。そう、本を読んでいると、この人は何よりも男に生きたということがよく分かるのです。彼女を語る上で外せない要素である仕事=作詞も、ファッションも、すべて男との関わりを語る中に集約される。猛烈に、情熱的に生きたイメージがあるけれど、それは恋に生きていたのである。

〝女は自分の人生を創るために恋愛するのだ〟そして、自分の人生を素晴らしく、長引かせたいために、その恋愛と結婚する、その男と結婚するのだ〟
(著書より)

と言い切っている。そして『30〜』では30歳を本当の大人の出発点であり、女は男とペアになって大人になっていく、という考えのもと、結婚するにふさわしい人の条件とか、事細かに書いてあって面白い。

コラム【伊藤美裕の歌謡遊泳】安井かずみという生き方

その大人の定義は様々だけれど、この本の中では〝自立〟がキーワード。そのために自分を知ることが大事で、その方法のひとつとして旅をあげている。私もこれは実感があって、ここ1年でアメリカとエジプトに行けたのは大きかった。ニューヨークはひとり旅だったこともあって人生観をがらっと変えてくれたし、当たり前だと思っていたことが実はそうではない、ということがカイロでも良くわかった。それは現地に暮らす人たちの生き方に触れることで感じることが多くて、きっとZUZUは海外に住んだり、海を渡るチャンスが多かったから日本のやり方にとらわれず、向こうのスタンダードというか、国際感覚を得たのだと思う。フランソワーズ・サガンなど、特にパリの女性の生き方から影響を受けた彼女の颯爽としたスタイルのある生き方は、当時かなりインパクトがあっただろうし、もしかしたら、今も多くの日本女性が真っ先にパリに憧れるのって、ZUZUが一役買っているのかも。

ZUZUの楽曲には自分自身が出ていることが多いけれど、けっしてアメリカ的ではない、パリらしい少しアンニュイな恋愛観も、しっかり歌詞に表れている。

〝あなたに1日会えないと それだけで人生にはぐれた
そんな気がしてた恋する女 そんな私を do you remember me? 〟

旦那さんである加藤和彦さんとの共作の作品、〝ドゥー・ユー・リメンバ・ミー〟の1フレーズ。女って、ひとりが好きだけれど、ひとりで生きられない。そういう彼女の可愛らしさ、ギャップがあって好きです。

とにもかくにも、ZUZU曰く花盛りの30代らしいので、ちょうど今そのスタートラインに立った私、さらに自分を拡げていける時期になりそう。もっとたくさんの旅をしたいし、歌いたいって意気込んでいます。5月には今までの振り返り、そしてここからのスタートという意味も込めて、初のバンド編成の周年ライヴも計画中。楽しみです。

伊藤美裕 ワンマンライブ

日時:5月13日(土) 開場 12:15 / 開演 12:45
会場:恵比寿天窓.switch
料金:4,600円 + 1drink代 全席指定
予約:スネークミュージック tel.03-3260-8535 / mail info@snakemusic.co.jp

伊藤美裕

生年月日:1987年4月4日生まれ
血液型:A型
出身地:大阪府池田市
特技・趣味:バイオリン、古着屋散策
座右の銘:in dreams begin the responsibilities(責任というものは夢見ることから始まる)

◆伊藤美裕 オフィシャルサイト
◆伊藤美裕 オフィシャルTwitter
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