【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#70 美術デザイナー・三原康博の言葉

仲村瞳の歌謡界偉人名言集

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

このルーツはあれだとか、これはあの本からかな、これはあいつのあれかなとか分析できちゃうとダメなんだね、エネルギーにならない。だから勘違いも大事なんです

『ザ・ベストテンの作り方 音楽を絵にする仕事』(双葉社/三原康博 テレビ美術研究会・編)

伝説の音楽番組『ザ・ベストテン』(TBS)の美術セットを初回から10年間担当した、美術デザイナー界の巨匠・三原康博。今回の名言は、三原へのインタビューを中心に構成された『ザ・ベストテンの作り方 音楽を絵にする仕事』という本からの抜粋である。本によると当時の美術セットには、様々なアイデアや最新技術が駆使されていたことがわかる。三原は、「それが若い時って全部自分で作ったんだと勘違いできるんですよ。要するに天才だと思い込んじゃうわけ」と話す。しかし、「若い時に自分のひらめきだと思っていたものも、よくよく考えてみるといろんなところから知らないうちに刺激を受けて出てきているだけなんだなっていうのがよくわかる」とも語っている。クリエーターや表現者は、他者の様々な作品に触れ、それらが知らず知らずのうちに血となり肉となるということの大切さを伝えてくれている。

三原康博(みはらやすひろ)
1937年生まれ、東京都出身。東京芸術大学美術学部工芸科図案計画卒業。1961年、東京放送(現・TBS)に美術デザイナーとして入社。『ザ・ベストテン』を初回から10年間担当する。他に、『サウンド・イン”S”』、『輝く! 日本レコード大賞』、『東京音楽祭』などの音楽番組をはじめ、『報道特集』、『はなまるマーケット』など、多くのテレビ番組の美術を手がけた。テレビ番組の他にも、『美空ひばり35周年記念』、『山口百恵ファイナル武道館』など、舞台美術でも活躍している。1974年と1985年の2度にわたり、『輝く! 日本レコード大賞』において、優れた美術デザインに贈られる『伊藤熹朔賞・本賞』を受賞。1995年、美術センター理事に就任。1997年、TBSを定年退職する。2000年から2011年まで、NPOテレビ日本美術家協会初代理事長を務める(現在は顧問)。2002年、テレビ放送50年を記念して『テレビアートのすべて : テレビ放送50年』を出版。現在は、名古屋芸術大学音楽部客員教授。