作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。
『不埒三昧 わが下半身の昭和史』(著・安藤昇/祥伝社/2001年7月25日発行)より
戦後の渋谷で、伝説の愚連隊の長としてその名を馳せた安藤昇。やがては銀幕のスター、歌手としても芸能界デビューを果たし、多くの作品を残している。この本は、そんな安藤の半生が赤裸々な女性遍歴とともに綴られている。今回の名言は、愚連隊時代の安藤を自らが表現した言葉。まるで官能ハードボイルド小説の宣伝文句のような生き様である。そして、安藤は「女のことを『色』と言うが、女こそまさに男にとって『人生の彩り』」であり、「女という『色』によって男の人生は豊かな天然色になる」と表現。いつ果てるともなく続く抗争の日々の中で、「この世に女がいなかったら、とっくに人生をやめていたろう」と悟り、女性の尊さを語っている。帯文は、作詞家・山口洋子の言葉「鋭い武器(もの)を隠し持つ男に女はときめく」。巻末に山口洋子が解説文を寄せていることも興味深い。
安藤昇(あんどうのぼる)
1926年5月24日生まれ、東京都新宿区出身。元東興業(安藤組)社長、俳優、歌手、作家、プロデューサー、家相研究家。1952年、不動産売買、興行、用心棒、賭博などを手がける東興業を設立。伝説の愚連隊の長として名を馳せる。1958年、安藤組解散。1965年、自ら執筆した自叙伝を映画化した『血と掟』(松竹)に主演し俳優としてデビュー。同年、シングル「新宿無情」で歌手デビュー。以後、「男が死んで行く時に」「愛すべき悪い奴への挽歌」など、14枚のシングルと7枚のアルバムを残す。1979年、映画『総長の首』(東映)の出演を最後に俳優を休業。以後は、Vシネマのプロデューサーや作家として活動を続けた。晩年は、長年の研究の成果により家相研究所『九門社』を主宰。2015年、肺炎により死去。享年89。