<昭和の歌人たち>最終回「古賀政男特集」に五木ひろし、氷川きよし、アントニオ古賀ら出演

<昭和の歌人たち>最終回「古賀政男特集」に五木ひろし、氷川きよし、アントニオ古賀ら出演

1月20日、東京都福生市の福生市民会館 大ホールで、日本音楽著作権協会が主催する<第36回 昭和の歌人たち>が開催された。

2006年に始まった<昭和の歌人たち>は、日本の音楽史に大きな足跡を残してきた作家達に焦点をあて、その作品と人物像を時代背景に触れながら紹介していくコンサート。最終回となる第36回のテーマは、戦前、戦中、戦後に多くの名曲を世に送り出した作曲家“古賀政男”。古賀は2018年で没後40年となる。出演は、五木ひろし、大川栄策、キム・ヨンジャ、小林幸子、椎名佐千子、氷川きよし、三山ひろし、ゲストはアントニオ古賀という豪華メンバーが、“栗田信生とJ’sバンド”の演奏で、古賀メロディーを歌い上げる。このコンサートではおなじみの、元NHKアナウンサー石澤典夫と由紀さおりのコンビが司会を務めた。

オープニングは、昭和15年のヒット曲「誰か故郷を想わざる」(歌:霧島昇 作詞:西条八十)を出演者全員で披露。続いて、五木ひろしが、昭和49年の自身の曲「浜昼顔」(作詞:寺山修司)を歌唱。「昭和という時代に歌い手になった方だったら、どなたも古賀先生に“自分の歌を書いてもらいたいな”と思ったと思うのよ。いいわね!」と由紀さおりも羨む曲である。五木は、「古賀先生は、古賀メロディーが皆さんに愛してもらえたのは、素晴らしい詞人と出会えたからだ。歌はいい詞から生まれる、と仰っていました」と語った。その詞人の中でも代表的な人物、西条八十の作品「サーカスの歌」(歌:松平晃)を氷川きよしが熱唱。その後は、五木ひろしが「男の純情」(歌:藤山一郎 作詞:佐藤惣之助)、大川栄策が「人生の並木道」(歌:ディック・ミネ 作詞:佐藤惣之助)、三山ひろしが「青い背広で」(歌:藤山一郎 作詞:佐藤惣之助)、キム・ヨンジャが「悲しき竹笛」(歌:奈良光枝 作詞:西条八十)、由紀さおりが「東京ラプソディ」(歌:藤山一郎 作詞:門田ゆたか)と、ヒットナンバーが続々と歌われ、客席は大いに盛り上がった。

出演者からは古賀についての様々な思いを聞くこともできた。9歳でスカウトされ、古賀の弟子となった小林幸子は「デビューした10歳の時、先生は還暦でして、孫のような気持ちで可愛がってくださいました。レコーディングは当時、同時録音(演奏と歌を同時に録音)だったんですが、ある時、何回歌ってもNGなんです。横にいてくださっていた古賀先生が業を煮やして『今の良かったじゃない。OKでしょ?』って仰ったら、ディレクターの方が申し訳なさそうに『古賀先生、一緒に歌わないでください』といったこともありました」と当時を振り返った。自身のステージでも古賀メロディーを歌うことがあるという氷川きよしは「『柔』は歌って元気になる歌。自分に負けられないという気持ちになります」、五木ひろしは「メジャーでもマイナーでも3拍子の曲が多い。メジャーの曲は一ヶ所だけマイナーになる部分があるのが特徴です。そこが味なんです」、由紀さおりは「先生の歌は人情が溢れた歌が多いです」と語った。

ゲストコーナーでは、古賀政男の弟子で、芸名も古賀が名付けた、アントニオ古賀が登場。古賀メロディーの真髄ともいえる曲「酒は涙か溜息か」(歌:藤山一郎 作詞:高橋掬太郎)、「湯の町エレジー」(歌:近江俊郎 作詞:野村俊夫)を、アントニオ古賀がギター演奏し、五木ひろしと共に歌うという貴重な機会となった。終盤は、五木ひろしによる「影を慕いて」(歌:藤山一郎 作詞:古語政男)の絶唱、出演者全員で「丘を越えて」(歌:藤山一郎 作詞:島田芳文)を高らかな合唱で締めくくった。シリーズの最終回を飾るのにふさわしい、意義深く熱のあるステージに、拍手と歓声がなかなか鳴り止まなかった。

このコンサートの模様は、2月11日(日)NHK BSプレミアムにて、19時30分より放送される。

取材・文◎仲村 瞳

<第36回 昭和の歌人たち>

2018年1月20日(土)@福生市民会館大ホール
[セットリスト]
01.「誰か故郷を想わざる」出演者全員
02.「サーカスの歌」氷川きよし
03.「男の純情」五木ひろし
04.「人生の並木道」大川栄策
05.「青い背広で」三山ひろし
06.「悲しき竹笛」キム・ヨンジャ
07.「東京ラプソディ」由紀さおり
08.「ウソツキ鴎」小林幸子
09.「お島千太郎」三山ひろし
10.「柔」氷川きよし
11.「悲しい酒」キム・ヨンジャ
12.「うちの女房にゃ髭がある」大川栄策、小林幸子
13.「あゝそれなのに」椎名佐千子
14.「トンコ節」椎名佐千子
15.「ゲイシャ・ワルツ」由紀さおり
16.「赤い靴のタンゴ」小林幸子
17.「青春サイクリング」三山ひろし
18.「東京五輪音頭」大川栄策、キム・ヨンジャ、小林幸子、椎名佐千子、氷川きよし、三山ひろし
19.「りんどう峠」小林幸子
20.「思い出さん今日は」由紀さおり
21.「人生劇場」大川栄策
22.「無法松の一生」氷川きよし
23.「酒は涙か溜息か」アントニオ古賀、五木ひろし
24.「湯の町エレジー」アントニオ古賀、五木ひろし
25.「影を慕いて」五木ひろし
26.「丘を越えて」五木ひろし、大川栄策、キム・ヨンジャ、小林幸子、椎名佐千子、氷川きよし、三山ひろし、由紀さおり

■古賀政男(作曲家)
1904年、福岡県生まれ。明治大学在学中に「明治大学マンドリン倶楽部」創設に携わる。在学中に音楽家を目指し、1931年、マンドリン倶楽部の定期演奏会にて「影を慕いて」を発表。その後、藤山一郎と出会い、「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」「東京ラプソディ」など数々のヒット曲を生み出す。1958年に日本作曲家協会を立ち上げ初代会長に就任。日本レコード大賞を制定するなど、音楽界の発展に尽力した。1964年、「柔」で第7回日本レコード大賞・大賞を受賞。1974年JASRAC会長に就任。1978年に73歳で死去。同年、国民栄誉賞を受賞。