『日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館』ルポルタージュ(道の駅 日光街道ニコニコ本陣)

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

春日八郎の「別れの一本杉」や村田英雄の「王将」など、歌謡史に輝く名曲の数々を世に送り出した大作曲家の船村徹。彼の功績を称え誕生した記念館『日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館』が、栃木県日光市今市にある。ここでは、その記念館の豪華な内部を紹介したい。

『日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館』は、2015年4月27日に開業した道の駅『日光街道ニコニコ本陣』の一角に併設している。この記念館は3階建てで、1階は、シアター1(夢劇場)、企画展示コーナー、ミュージアムショップ。2階は、展示ブース1(お出迎え5大歌手)、シアター2(歌の万華鏡)、船村メロディーボックス、展示ブース2(船村徹 人生と仕事)。3階は、交流エリア(光と風のギャラリー)、日光連山眺望カウンター、歌道場1・2・3(貸しスペースA・B・C)、展示ブース3(演歌巡礼)、といったフロア構成。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

まずは、2階の〈展示ブース1「お出迎え5大歌手」〉から観覧スタート。美空ひばり、春日八郎、村田英雄、北島三郎、鳥羽一郎の5大歌手のスクリーンパネルがお出迎え。船村と歌手たちのエピソードやメッセージなどが展示・上映されている。「みだれ髪」のレコーディング時に使われたヘッドホン、マイク、楽譜も見どころの一つ。楽譜には、船村が書き込んだ部分も確認することができる。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

ゆるやかに湾曲する白壁には、約500枚の船村作品のレコードジャケットとCDジャケットが飾られている。1950年代から2000年代のものまでが年代順に並べられており、デザインの変化がわかるのも興味深い。それぞれが魅力的で、このコーナーだけでも数時間いられるのではないかという位の面白さ。これでも手掛けた曲の10分の1ということに驚きである。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

次に、1階の〈シアター1(夢劇場)〉にて、約15分間、大迫力の3Dグラフィック映像を鑑賞。3D眼鏡をかけて観るグラフィック映像は驚くほどリアル。美しい景色の中、自分のすぐ目の前で大スター達(北島三郎、ちあきなおみ、島倉千代子、鳥羽一郎、美空ひばり)が歌っているような不思議な感覚になる。舞い散る桜、流氷、不死鳥などの動きにも圧倒させられ、しばらく余韻に浸ってしまうほどの感動を味わえる。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

続いて向かったのは、2階の〈シアター2(歌の万華鏡)〉。半円状の空間に広がる5面マルチスクリーンに、「王将」(村田英雄)、「風雪ながれ旅」(北島三郎)、「海の祈り」(鳥羽一郎)、「女の港」(大月みやこ)、「みだれ髪」(美空ひばり)といった、船村の代表曲にまつわるエピソードが映像とともに、まさに万華鏡のように映し出される。〈船村メロディーボックス〉では、名曲500曲+と称して、「別れの一本杉」、「哀愁波止場」、「王将」「なみだ船」、「風雪ながれ旅」、「兄弟船」「矢切りの渡し」、「みだれ髪」などなど、船村の代表曲を自由に視聴することができる。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

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〈展示ブース2(船村徹人生と仕事)〉では、船村の一生を年譜で追いつつ、その業績などを示す展示品を見ることができる。2016年に、歌謡曲の作曲家として初めて文化勲章を受章した船村。明仁上皇の自筆のサインが入った勲章がここに展示されている。レコード大賞の受賞トロフィー、船村が歌供養(ヒットしなかった歌を弔う儀式)のために彫った木彫仏、関連書籍の展示などもあり、船村の活動の幅広さを知れるコーナーだ。「刑務所の慰問や支援、地元の学校に楽器をプレゼントするなど、色々な人の支えになる活動を多く続けてきて、演歌ファンだけでなく、人間船村徹を尊敬してファンになる人が多いのです」とは、加藤加代子館長。船村に関する知識と情熱が素晴しい、船村の伝道師である。加藤館長のお話によると、現在も発掘中の資料があるということで、そちらも楽しみだ。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

3階の〈交流エリア(光と風のギャラリー)〉では、船村をはじめ、北島三郎、美空ひばりなど大スター達の手形に直接触れることができる。〈日光連山眺望カウンター〉で日光の山々の美しい景色を堪能したら、〈歌道場1・2・3(貸しスペースA・B・C)〉でカラオケ(1曲/100円)も楽しめる。船村のオリジナルバンド演奏を背景に合成し、ステージで歌う姿をDVDにすることも可能(1枚/1100円 ※選べる曲は20曲)。実際にはグリーンバックのステージでカラオケで歌唱し、3台のカメラで撮影する。中には1曲ずつ衣装を変えて、10曲分のDVDを作成する強者もいるとか。

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3階では、「愛弟子『北島三郎』展」が開催中(2019年6月12日〜12月27日)。入館料のみで、北島三郎関連の数々の貴重な展示を見ることができる。年譜、デビューまでの苦労話、写真パネルなどの資料、船村徹直筆の原稿、北島三郎の紅白歌合戦出場時の衣装まで見られる機会はなかなかない。北島の音源も流れており、発売禁止となったデビュー曲「ブンガチャ節」も聴くことができた。

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

最後は、1階のエントランス横にある〈ミュージアムショップ〉で買い物。日光街道ニコニコ本陣や記念館オリジナルグッズ、船村関連商品やCD、日光の名産品などを販売している。1日かけても見尽くせない程の充実した内容の施設で、何度も訪れる人もいるそうだ。船村徹の偉大な足跡、名曲の味わい深さにも心を打たれるはず。歌謡ファンならずとも、日本人なら一度は訪れてほしい、楽しみどころ満載の記念館である。

取材・文:仲村 瞳

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館

営業時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休業日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日休)、12月29日〜1月3日 
料金:一般540円、小・中・高校生320円、乳幼児無料
住所:栃木県日光市今市719番地1
電話:0288-25-7771
[ 車・バスでのアクセス ]
JR日光線今市駅から徒歩約5分
東武日光線下今市駅から徒歩約5分
[ 車でのアクセス ]
日光宇都宮道路今市ICから約3分

船村徹(ふなむらとおる)

1932年6月12日生まれ、栃木県塩谷郡塩谷町出身。作曲家、歌手。日本作曲家協会最高顧問。日本音楽著作権協会(JASRAC)名誉会長。横綱審議委員会委員。東洋音楽学校在学中、米軍キャンプ専門バンドのバンマスや流しの歌手などを経験。この頃、作詞家の高野公男と出会い、作曲活動を始める。1953年、芸能雑誌『平凡』の作曲コンクールに船村が出展した「たそがれのあの人」が第一席を獲得。その曲がレコード化(歌:山路えり子)されたことで作曲家としてのデビューとなった。1955年、春日八郎の「別れの一本杉」、三橋美智也の「ご機嫌さんよ達者かね」、三橋美智也の「あの娘が泣いている波止場」が連続ヒット。1956年、キングレコードからコロムビアレコードに移籍し、青木光一の「柿の木坂の家」と「早く帰ってコ」(歌・青木光一)で再び連続ヒットを飛ばす。1961年、村田英雄の「王将」が戦後初のミリオンセラーを記録。1962年、船村門下生だった北島三郎を「なみだ船」でヒットに導く。それ以降も、1982年、鳥羽一郎の「兄弟船」や1987年、美空ひばりの「みだれ髪」など、昭和を代表する名曲の数々を生み出し続けた。手掛けた曲は5,000曲以上。2016年、歌謡曲作曲家として初めて文化勲章を受章している。2017年2月16日、心不全により死去。享年84。

関連リンク

◆船村徹 日本コロムビアオフィシャルサイト
◆日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館オフィシャルサイト
◆道の駅 日光街道ニコニコ本陣オフィシャルサイト