【インタビュー】石川さゆり 新作アルバム『粋~Iki~』発売「世界に、そして若者に、日本文化の “カッコよさ”、“面白さ”を伝える!」

石川さゆり

「自分達が何者か」っていうことが大切

ーーこのアルバムをきっかけに、日本の文化に興味を持つ人も増えるのではないでしょうか。

石川「なんか上手く言えないですけど、海外の文化に染まるのも素敵なことだけど。まず、『自分達が何者か』っていうことが大切だと思います。ニューヨークにふらりと遊びに行くと、ニューヨークは色々な国の人達の集まっているところですから、街頭でTシャツを売ってるお兄さんまでもが、『お前どっから来た?』って声かけて来て、『日本から来たよ』って言うと、『俺はね、こっから来てね、こういう国なんだよ。こういうところが素敵でさ! 食べ物はこんなものがあってさ!』って、よく喋るんですよね。自分のお国自慢というか、生まれたところ、育ったところの話を。でも日本人ってそれをしない。すごい不思議だなあと思って。もしかしたら知らないからかも知れない。だからそういう日本人のカッコよさとか、そういうものも、胸張って伝えてほしい。音楽も歌も。っていう気がしますよね。」

ーーそうですよね。謙虚というか。海外の人に説明して、ポンポンとは出てこないですよね。

石川「でも向こうで暮らしている海外のそういう人達みんな、すっごい楽しそうに『知ってる? ここ!』って言いますね」

ーーそんなに違うものなのですね。

石川「だからやはり、もっともっとインターナショナルになってもらいたいですよね。本当の意味で」

ーー東京オリンピックも間近ですしね。今回のアルバム『粋~Iki~』は、参加されているミュージシャンも錚々たる方達ですね。

石川「はい。そういうお話をしながら、皆さんが賛同してくださいました」





ーーオープニング曲の「火事と喧嘩は江戸の華」はオリジナルで、KREVAさんも一緒に作詞・作曲、ラップにも参加されているとは豪華ですね。

石川「そうですね。KREVAは江戸東京博物館へ行ったそうです」

ーー今回のために? 研究熱心な方なのですね。

石川「はい。そうですね。最初、私が詞を書いて。で、曲が上がって。で、これをラップで、もっと気持ちよく切り口を作っていってほしいってお渡しして。そうやってみんなで作っていきました。で、MIYAVI(ギター)が入って、そうすると世界がもう一つ、宇宙が加わって(笑)」

ーーラップは元々喧嘩だったという説もありますし、今回のイメージに合っていて面白いと思いました。

石川「ラップってそうなの? そうか言い合いのね。『火事と喧嘩は江戸の華』、これが私の中でまず、入口にしたいと思ったんです。江戸ってそういう感じだよね、そががキャッチ-なことだよねって。でもちょっと待てよ、そういう今の時代から、どんどんこういうふうに変わっていったよねって言いながら、そしてシューンって時代を、タイムトンネルをくぐっていくと、ストトン節に落ちていくっていう」

ーーそれでこの曲順なのですね。「東雲節」では、作曲家の神津善行さんがアレンジで参加されているというのもすごいですね。

石川「『東雲のストライキ』ってあの頃の遊郭の女の人達が腰巻振ってストライキをしたっていう。でも、『もうやめろ!』って言われてやめてはみたけど、結局何もやることなくてゴミ拾いやってるよ、みたいな(笑)、すごいでしょ。」

ーーはい。「行き場がないので屑拾い」ですからね。

石川「そんな歌、今ないですよね! それくらいだから歌い飛ばしちゃってるっていう。そういう心地良さ、それくらい歌が寄り添っていたし、代弁していたしっていう勢い、歌の力ですよね、本当に」

ーーアレンジが洋楽のテイストも感じられてカッコいいです。『まっくろけ節』は、都々逸の部分をなかにし礼先生が作られたのですね。

石川「はい。今回のために新しく作っていただきました。好きな人が寝ている間に、その人の顔にいたずら書きをしちゃったっていう。都々逸っていうのは何を言ってもいいんです。即興ですから。だから日本人ってそれくらい、即興で色々なことを楽しんでいたんですね。俳句もそうですけど。みんなやったんですよね。お座敷に行っちゃあ芸者さんのお姉さんと俳句のキャッチボールをしたり、そんな素敵な遊びをしていたので」

ーー篠笛、サックス、トランペット、トロンボーンなどの楽器の音がたくさん入っているのも素敵ですね。「深川」では、ドラム、ベース、ギターというバンドサウンドも魅力的です。

石川「みんなが、これが好きだな、いいなっていうのを見つけていただけたら嬉しいですね」

ちょっと負荷をかけた方が、面白きことと出会える

ーーレコーディングで時に印象深かったこと、楽しかったのはどんなことでしょう?

石川「レコーディングは面白かったですね。もっとこうしよう、ああしようって言いながら、ただそこに至るまでが、結構、準備が大変でしたね」

ーーご準備とはどんなことでしょうか?

石川「小唄なんて、実に特殊な世界だと思うので。そのお稽古に行ったりとか」

ーー小唄の先生のところに通われて、ということですか?

石川「はい。そうですね」

ーー先生はどんな方なのですか?

石川「その道の先生、お師匠さんです。やはり一度、ちゃんと正当なものを自分の中に落とし込まないと思いまして。今の時代に歌や音楽を移行させるにしても嘘になってしまうので。その歌の肝をちゃんと知るには、王道なものを自分の中に入れる。それでそこから『こういうふうにアレンジしていきましょう』っていうのを作っていくので、そこまでが大変でした」

ーーどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか?

石川「どのくらいっていうか、市丸さんがお歌いになっていたのも何年も前からずっと聴いていましたけれど。それをセレクトしていくというか。それも楽しくもあり、大変でもありっていう感じですよね。決めたら今度お稽古に行く、そしてまたちゃんとみんなで、アレンジをどういうふうにしていこうかって。とても楽しいですよ。でも何もないものから作っていくっていうのは、恐ろしくもありますけど、形が見えてくるとすごく面白いです。いつもそんなことの繰り返し」

ーーこのアルバムの曲を歌われるコンサートのご予定はあるのでしょうか?

石川「それは6月からですね。その前に私、舞台公演もあるので。それは歌芝居っていうまたちょっと違う試みなんです。芝居の中に音楽、歌があるっていうことを。なんかそれをあげていくと、今年の私も色々やるので。だからまあ、今回は『粋~Iki~』に特化してください(笑)」

ーー最後に、キャリアの中でもずっとチャレンジをし続けられていると思うのですが、そのモチベーションは何でしょうか?

石川「そうですね、歩いていると色々な発見があり、そうするとそこを探ってみたくなり、素敵なものになっていきそうだと皆さんに届けたくなり、っていうそんな感じですね。まあ、どこまでそれができるかわかりませんけど。だから、わけわからない跳ね方は嫌だなと思うんです。やはりこうやって今まで長き時間をかけて培ってきたものを、それをベースにしながら、色々な枝がまた伸びているので、そうすると面白いものと出会えていく。人の出会いもそうですし、それが、歌い手が生きてるってこういうことなんだなって思います。やはり作り出すことが私達の生きてることだと思うので、皆さんに届けたいと思いますね」

ーー良いお言葉をありがとうございます。カッコいいです。

石川「そんなことないです! もう精一杯なんですけど、毎回、もうダメだと思いながら(笑)。でも、ちょっとだけやはり、これで良しというもので仕事をしていくより、ちょっと負荷をかけた方が、面白きことと出会えるかなってまだ思えるので、やってみたいと思います(笑)」

ーー毎回、限界をちょっとだけ越えていくということですね。

石川「そうですね。やったことがないこととか」

ーー昨年の紅白歌合戦の囲み取材の際に、「道を極めるということはない」とお話されていて、すごく心に残りました。

石川「いえいえ、それは頑張っている人を見て、そうなんだなって思っているだけです(笑)」

ーー貴重なお話をありがとうございました。

ニューアルバム『粋~Iki~』

石川さゆり / 粋~Iki~
2020年2月19日発売
TECE-3579 / 3,200円(税込)
[ 収録楽曲 ]
1. オープニング「火事と喧嘩は江戸の華」feat. KREVA, MIYAVI
 作詞・作曲 石川さゆり、KREVA、亀田誠治 / 編曲 亀田誠治 / Guitar MIYAVI
2. ストトン節(都々逸入り)
 作詞 添田さつき・一部作者不詳 / 作曲 添田さつき / 編曲 亀田誠治
3. さのさ
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 三宅一徳
4. 東雲節
 作詞 添田亜蝉坊・横江鉄石 / 作曲 添田亜蝉坊 / 編曲 神津善行・大貫祐一郎
5. まっくろけ節(都々逸
 作詞作曲 添田唖蝉坊、後藤紫雲 / 編曲 亀田誠治 / 都々逸作詩 なかにし礼
6. 青柳
 作詞・作曲 作者不詳 / 三味線 豊藤美
7. 奴さん
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 三宅一徳
8. 木遣りくずし
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 三宅一徳
9. 猫じゃ猫じゃ
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 坂本昌之 / コーラスアレンジ ベイビー・ブー
10. 都々逸
 作詞 柳家三亀松
11. 虫の音
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 服部克久
12. しげく逢ふのは
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 服部克久
13. 梅は咲いたか
 作詞・作曲 作者不詳 / 編曲 亀田誠治
14. 深川
 作詞・作曲 / 作者不詳 / 編曲 亀田誠治
15. REPRISE「火事と喧嘩は江戸の華」feat. KREVA, MIYAVI
 作詞・作曲 石川さゆり、KREVA、亀田誠治 / 編曲 亀田誠治 / Guitar MIYAVI

関連リンク

◆石川さゆり オフィシャルサイト

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