作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。
『Rooftop』(復刻インタビュー/長渕剛✕平野悠/「今こそ歌の持つ力をもう一度見つめ直したい!/2002.7.1)より
ほとんど放送禁止歌のような扱いを受けた、長渕剛のプロテストソング『静かなるアフガン』(2002年5月9日発売) 。アメリカ同時多発テロ事件とアフガニスタン紛争がテーマのこの曲に衝撃を受けた平野悠(ライブハウス『ロフト』の創始者)による、長渕剛へのインタビューである。平野は「昔は反体制運動を盛んにやってた連中が、今の日本の権力機構の中枢にいるんですよね。そういう世代に対して “お前ら一体今まで何をやってきたんだ!? 少しは自分の青春を思い返せよ! ” という苛立ちがあったんでしょうかね?」 と問いかける。それに対するひとつの答えが今回の名言。長渕剛は「本当に、彼らに近づけば近づく程失望していくことのほうが多いなぁ。“なんで一緒に怒らないんだろう!? ”と」と答えつつ、自身にとっての本来の歌の意味を示す。「自分の言葉で、自分のメロディで、世にケンカをふっかけてきたんじゃなかったのか!」という言葉にも長渕の熱い魂が感じられる。
長渕剛 (ながぶちつよし)
1956年9月7日生まれ、鹿児島県鹿児島市出身。シンガーソングライター、俳優、詩人、画家、書道家。1975年、大学在学中に永渕剛の芸名で、バーやライブハウスなどで音楽活動を始める。1976年、『第12回ヤマハポピュラーソングコンテスト(以下、ポプコン)』に出場し「雨の嵐山」で入賞を果たす。1977年、シングル「雨の嵐山」でシンガーソングライターとして長渕剛(ながぶちごう)の呼び名でレコードデビュー。1978年、『第15回ポプコン』に出場し「巡恋歌」で入賞を果たす。同曲で、呼び名を長渕剛(ながぶちつよし)に戻し再デビューする。1980年、「順子」が大ヒット。1983年、テレビドラマ『家族ゲーム』に初出演し俳優として本格デビュー。以後、テレビドラマでは『親子ゲーム』『とんぼ』、映画では『男はつらいよ 幸福の青い鳥』『オルゴール』『英二』など、多くの名作に出演している。1987年、『第29回日本レコード大賞』にてアルバム『LICENSE』がアルバム大賞を獲得。1990年、『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。2001年、アルバム『空』リリース。マッチョでパワフルな長渕のイメージがこの頃に確立される。2004年、鹿児島県の桜島特設ステージで約7万5千人規模のオールナイトコンサートを敢行。2015年、静岡県の富士山の麓の特設ステージで約10万人規模のオールナイトコンサートを敢行。2019年、20年ぶりに映画「太陽の家」に主演。2020年1月17日に、『Orange』 (CD+DVD) 発売。