【インタビュー】歌謡殿堂レジェンド〜成功への道〜 第二回:橋 幸夫(前編)

橋 幸夫

凄まじいデビューからの9ヶ月間

ーー新人賞は橋さんのためにできた賞だったんですね。

橋「その年は和田弘とマヒナスターズと松尾和子さんの大賞と僕の新人賞で、ビクターはコロムビアに勝ったわけですよ。そういう半年あまりのデビューからの出来事です」

ーーデビューから壮絶なお話です。

橋「こういう話が実録としてたくさんあるんです」

ーーファンの方々の反応はいかがでしたか?

橋「テレビに出るようになって、もう『あの子だったのね』となっただろうし、全国で見ていた人達が、『橋 幸夫ってあの時出ていたんじゃない』って、ロッテ歌のアルバムを見ていた人達はわかるわけですよね。そこから橋 幸夫ファンっていうのは全国的に増えていきました。舞台は、フランク永井ショー、錦糸町の江東劇場、浅草の国際劇場、大阪の大劇(大阪劇場)とあっという間にバババッて舞台に出されたんですね。そこで、デビューから9か月後の昭和36年の3月、浅草国際劇場で初めての橋幸夫のワンマンショーが始まったんです」

ーー凄まじいスケジュールですね。

橋「この僕の9カ月間は、凄まじいです。ショーは、1週間公演なんですけど、1日3回。現在の浅草ビューホテルですよ。あそこに3,300人入る東洋一の浅草国際劇場、一日で約1万人、それを1週間だから6万人は入るでしょう。それを7万8千人入れたんですよ。浅草国際劇場はつぶれちゃったけど、当時記録で残っていたんですよ。全国から上野に来て、浅草に来て、国際劇場で観たっていう人が相当いたんですよ。それから毎年やるようになったんです」

橋 幸夫

ーーデビューしてすぐに大活躍されたことで、大変なことも多かったのではないでしょうか?

橋「そうですね。まず、大変な毎日ですよね。何だかわからないまんま、着物は着せられるようになっちゃった。『潮来笠』から、色んな時代物ばっかり。考えたら、昭和35年、デビューしたその年末までに『潮来笠』って映画撮っているんですから。大映映画の専属になって。そして、『木曽ぶし三度笠』が三作目。その時に僕は主役ですよ。それも年末までに撮っちゃった。翌年明けてから、もう年間4本から5本、映画の撮影ですよ」

ーー昔は映画の公開のペースが早いですよね。

橋「早いですよ。大映、松竹、競争の時代。東映も。これは全部、京都の撮影所なんです。京都に通ってテレビに出て、また撮影に入っていて……。これをもうずーっと3~4年忙しくやった」

ーーそれはハードですね。

橋「だから、御三家って呼ばれたのは4年後ですから。それまでの3年間っていうのは、僕は死ぬ思いの毎日ですね。考えたら」

ーーお休みもなく?

橋「ないですね。睡眠時間もほとんど3~4時間だったから。若いからやれたけどね。そんな日々でしたよ」

ーーボクシングや柔道で鍛えられていたのも良かったのでしょうか?

橋「確かにね。そういう耐久力は持っていたし、結構へっちゃらでやりましたけどね」

ーーたくさんお聞きしたいことがあるのですが。着物というのは着せられた感じだったのですか?

橋「そう。うちが呉服屋だったからね。洋服じゃ合わないんじゃないかって。最初のジャケットは背広を着ているんですよ。それを無理矢理、マルベル堂さんという所で撮られて、それを使っていた。そうしたらすぐ𠮷田先生が『橋君のところは呉服屋だからな、着物でも来たらどうだ』ってなって。で、元々、おふくろが大ファンだから、『あたしが全部見繕うから』って姉貴と2人でね。で、姉がすぐに僕に付く人間になったんでね。まだ嫁入り前だったし、学校終わったぐらいの姉だったんでね。その姉がべったり僕に付いていたから。もう着付けも全部姉がやっていたし、家族ぐるみでみんなが応援する。それでその、呉服屋の『富士越』って店だったんだけども、もう半年経たないうちに郵便屋さんが、毎日来るんですよ。夕方『来ましたよー!』っていうからバッグを開けたらみんな、僕へのファンレターばっかり。そういうのが毎日続いて、1日数えたら700通ぐらい。そんな日々になっちゃったわけ」

ーー国民的スターですね。

橋「あれよあれよという間に寝る間もない生活になって、デビューした翌年が高校の3年で全然学校に行けないんですよ。それでおふくろや兄貴たちが学校に交渉してくれて、校長がいい人で『卒業させてあげるから』って(笑)。で、青柳君っていう僕の親友にレポートも全部書かせて、卒業式にも仕事で行けなくて。おふくろが卒業証書を取りにいって。だから高校もロクに出られなかった私なんですけどね。そこからですよ。もう、とにかく、色んな仕事をどんどんどんどんやっていくっていう」



インタビュー後編は近日公開です。お楽しみに!





橋幸夫『60周年記念デュエットベスト~星よりひそかに 雨よりやさしく~』


2019年7月3日発売
VICL-65207 / 3,000円+税
[ 収録楽曲 ]
01. いつでも夢を(デュエット:吉永小百合)
02. 若い東京の屋根の下(デュエット:吉永小百合)
03. 若い歌声(デュエット:吉永小百合)
04. そこは青い空だった(デュエット:吉永小百合)
05. 東京音頭(デュエット:三沢あけみ)
06. 蘭太郎街道(デュエット:山中沙南子)
07. 愛のしあわせ(デュエット:吉永小百合)
08. 夢みる港(デュエット:吉永小百合)
09. あの娘は街へ(デュエット:吉永小百合)
10. 東西南北音頭(東京)(デュエット:三沢あけみ)
11. 大名古屋音頭(デュエット:三沢あけみ)
12. 北国の白い花(デュエット:水野洋子)
13. 花笠太鼓(デュエット:古都清乃)
14. お祭り音頭(デュエット:西川峰子)
15. 宇宙博音頭(デュエット:三沢あけみ)
16. 昭和音頭(デュエット:金沢明子)
17. 今夜は離さない(デュエット:安倍里葎子)
18. 男と女(デュエット:安倍里葎子)
19. スターダスト上海(デュエット:ステファニー)
20. 君の手を(デュエット:林よしこ)
21. 今夜は離さない~令和バージョン~(デュエット:保科有里)

関連リンク

◆橋 幸夫 オフィシャルサイト

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