カルト歌謡カルタ【わ】常田富士男「私のビートルズ」

カルト歌謡カルタ【わ】常田富士男「私のビートルズ」

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「私のビートルズ」

1970年発表
歌:常田富士男
作詞:吉岡オサム
作曲:神津善行
編曲:佐々永治

「♪ハゲ山のハゲタカが 私を少しかじったから ハッシッシ ハッシッシ ハッシッシをあげたのさ 夢見る旅」という、出だしからしてぶっ飛んだ曲。

その曲を常田富士男(当時33歳)が歌う。常田といえば、アニメ『まんが日本昔話』(1975~1994年MBS・TBS系列で放映)で声優として市原悦子と2人で何役もこなした印象が強い。何歳になっても可愛らしさがある不思議な風貌と独特な語り口調で、俳優やナレーターとしても活躍している。

歌詞にある『ハッシッシ』は大麻樹脂。ビートルズは、ボブ・ディランに勧められたのをきっかけに大麻を愛好していた。後にポール・マッカートニーは、「僕らはディランにマリファナを教わったのが自慢」と語っている。また、ビートルズはインド文化に耽溺し、瞑想の修行をする。ハッシッシの一種チャラスはヒンズー教ではシヴァ神がもたらす聖なる贈り物として珍重されている。歌詞からビートルズとインドと大麻の関係が連想される。

作詞は、1989年に「好色一代女」(歌:内田あかり)で第31回日本レコード大賞作詞賞を受賞、2003年に紫綬褒章を受章した作詞家・吉岡オサム(旧筆名/後は吉岡治)。「真赤な太陽」(歌:美空ひばり)や「天城越え」(歌:石川さゆり)など、歌謡曲・演歌の他、童謡「あわてんぼうのサンタクロース」やアニメソング「悟空の大冒険マーチ」など幅広いジャンルの曲を世に送り出している。その中で「私のビートルズ」は異彩を放つ。

2001年に大槻ケンヂ(筋肉少女帯)がボーカルを務めるロックバンド・電車の1stアルバム『電車トーマソ』の中でカバーしている。

解説・イラスト:はらめがね